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【ウートガルザ=ロキ】 うーとがるざ・ろき
分類:北欧神話
 Utgardha Loki。巨人族の王で、幻術を使って北欧の雷神ソールを幾度も騙くらかした策士。その名には化外の地を閉ざす者の意味がある。
 いくつかあるvsソールのエピソードから一つ紹介しよう。
 ソールがロキと従者のシャールヴィとロスクヴァを引き連れて巨人の砦へ赴いた時の事です。辿り着くまでにも実は一悶着あったのですがそこはそれとして割愛しまして、到着直後。砦の長であるウートガルザ=ロキは「この砦では一芸に秀でたものしか持て成す事はしない」とソールに言います。それに大して真っ先に反応したのがロキ。彼は早食いで自分に勝てる者はいないと豪語しました。まぁ、結果は、ウートガルザ=ロキが差し向けたロギによって斬って落とされたのですが……(この勝負の顛末については、ロギの項をご参照下さい)。
 続いて、シャールヴィが得意の駆け足で勝負を申し込みますが、ウートガルザ=ロキ側の選手フギによって、またしてもソール側の敗北です(詳細はフギの項目を参照)。
 三度目の勝負は、ウートガルザ=ロキとソールによる、呑み較べ勝負。ウートガルザ=ロキは愛用の杯を部下に持って来させ、「この杯を使って一気呑みできれば大したもの。但し、砦の者でも三口で呑み干せた者はいない」と言います。勿論、ソールは受けて立ちますが、結果は惨敗。どれだけ呑んでも、杯の酒はなくなりませんでした。実はこれもウートガルザ=ロキの幻術で、この杯の先は海に繋がっていたわけで、流石のソールも海一杯の杯を呑み乾す事は出来なかった、と言うワケです(それでも、これが原因で海に引き潮が生まれた、と言うのですから、大したものです)。
 次なる勝負は、猫をソールの力試し。猫の片足を持ち上げよ、と言うものでしたが、これまたウートガルザ=ロキの策略に掛かって、惨敗です(詳細はヨルムンガンドの項を参照)。
 最後はソールとの一対一ガチンコ勝負に持ち込みます。が、出てきた相手は「エッリ(Elli老齢)」婆さん。ソールは自尊心プライドを掛けてエッリ婆さんと取っ組み合いますが、どれだけ攻めてもエッリ婆さんはビクともしません。激戦の結果、とうとうソールはエッリ婆さんによって片膝を突かされてしまい、負けを認めます。勿論このエッリ婆さんもウートガルザ=ロキの幻術で、彼女は「老化」の化身だったのです。例え神と言えど、老齢には叶わないと言う、何とも奥が深い勝負ではありませんか(ついでに言えば、老いに対して長く抵抗し、かつ片膝を突くだけに留まったのは、ソールならではの結果と言える面目躍如でしょう)。
 全ての勝負が終わった後で、ウートガルザ=ロキは「実はお前の目に幻術を掛けていたのだよ」と打ち明けます。ソールはその絡繰りに激怒し、ミョッルニルを叩きつけます。が、叩きつけられるよりも早く、ウートガルザ=ロキと彼の砦は掻き消えてしまいます。もしかしたら、ソールは「勝負の最中」だけではなく、最初から最後まで、ウートガルザ=ロキに幻術を掛けられていたのか――更に言えば、ウートガルザ=ロキ自体の幻術だったのかもしれません。
関連用語: シャールヴィ≫≪ソール≫≪フギ≫≪ミョッルニル≫≪ヨルムンガンド≫≪ロキ≫≪ロギ≫≪ロスクヴァ

【ウートガルズ】 うーとがるず
分類:北欧神話
 Utgardsr囲いの外側化外けがいなる地とか呼ばれる土地で、「ヨトゥンヘイム(Jotunnheim巨人の国)」や野獣などの外敵が犇めく大地の事。色々と想像を掻き立てられる冒険の地ではありそうだが、それ程多くの資料が見られないと言う事は、単に重要性が無かったのか、それとも禁忌なる地とされていたのか……。
関連用語: アースガルズ≫≪ミズガルズ

【ヴリトラ】 ぶりとら
分類:インド神話
 Vrtra。古代インドの叙事詩「リグ=ヴェーダ」に登場するインド神話最大の魔物。インドにおける技巧と工芸の神とヴァシュトリによって生み出された邪竜で、漆黒の肌・黄色い目・白い牙を持った巨大なドラゴン。憎しみに因って生み出され、神々はもとより、人間を含む全ての生命を憎み、大地を割り、太陽や月を追い回し、大海を飲み乾すとも言われる、天変地異も斯くやと言う強大な力を有していた。
 インドにおける世界の守護神インドラの計略によって、唯一信じた愛に裏切られる形で殺害され、その幕を閉じた。逆に言えば、世界の守護神とも言えるインドラでさえ、策略を用いなければ倒す事が能わなかった最強の魔獣であると言える。
 ヴリトラには障害の意味がある。

【ウンディーネ】 うんでぃーね
分類:錬金術
 Undine。彼(女)らの名は彼(女)らを風を司る四大の精霊として定義付けた錬金術師パラケルススの命名であり、その由来はラテン語の「波、水(Unda)」で直訳すれば波の人
 昨今では「水が細身の美女の形を成した姿」として描かれる事が多いが、本来の彼(女)らはその姿形は人間のそれと大差無い。多くの場合は女性の姿として語られるが、男性形のウンディーネも存在していたようだ。恐らくは「湖や泉などの水の中に住むと言う性質」や「水の精霊としての存在としてのイメージ」が、より解かり易い形でウンディーネの姿身を変えたのではないだろうか?と、文責者は勝手に想像する(論拠ゼロ)。
 ウンディーネは人間と妖精の中間的存在だとされるが、本来彼女らは魂を持たない存在である。しかし人間と恋をし、結ばれる事で魂を得ると言う(魂が無いのに恋が出来るのか?などの疑問は尽きないが、そう言う事らしい)。しかし、ウンディーネを娶った男が水の傍でウンディーネを罵倒するとウンディーネは水に還らなくてはならず、水に還ったウンディーネは魂を再び失う事になってしまう。また、一度ウンディーネを娶ってしまうとウンディーネとの契りが成立している最中は当然の事として、別れた後でも別の女性に恋心を抱く事は許されず、その心を別の女性に寄せてしまうとウンディーネによって殺されてしまうと言われている。斯様な人間とウンディーネとの間に芽生えた恋心を綴った作品も多く残り、ドイツの作家フリードリヒ・フーケ作の『ウンディーネ』や、フランスの劇作家ジャン・ジロドゥ による『オンディーヌ』などが有名――らしい。
関連用語: サラマンダー≫≪シルフ≫≪ノーム


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