Frame ON

【シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔 白昼の冥路
  評価点:65点  刊:角川スニーカー文庫  著:北沢慶・川人忠明・友野詳  絵:あるまじろう
   え〜、これは「妖魔夜行」と呼ばれるシリーズの後継シリーズの第二巻です。何人もの作家陣によって、文字通り世界を共有して(shared"共有する" )物語を綴っていく、一風変わった(とは、今更言わないかな?)作品です。この巻は、上述の三人の作家様によって綴られています。
 このシリーズの焦点は、「妖怪」の発生理念。人の思い――それは「願望」であったり「恐怖」であったり「愛着」であったり様々だが――が集った時、彼達は生まれる……。と言う所だろう。妖怪好きは洩れなくチェックを入れとくように。
 一つ一つの短篇が一人一人の作家さんの手によるものだから、纏めてこれを評する事は出来ませんが、一応それなりのレベルはキープされてます。楽しみましょう。お勧めは、ちょっとほのぼの『月夜飛行』ですね。

【シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔 黄昏に血の花を
  評価点:45点  刊:角川スニーカー文庫  著:西奥隆起・柘植めぐみ・友野詳  絵:あるまじろう
   点数通り。三つの独立した短編が収録されているので、ちょっとした暇潰しには持ってこいだと思います。ただ、半妖怪の波田洋大の人間と妖怪への見解の移り変わりと、妖怪ハンターの "ザ・ネット" の今後と過去とが非常に気になる。あと、名執桐子がまさか昔懐かし「ろくろ首」だとは……何て言うのか、捻りの無さが逆に捻りになっていて、古き良き時代を思い出させられました。
 第一話:横浜上空、異常あり(西奥隆起)。飛行機好きには良いんでは?頑固頭の日本軍人って、憎めちゃう良さがあるよね。何て言うのか、「頑固親父」で。そんな頑固親父になりたいとも身内に欲しいとも思わないが。
 第二話:白とクロの番人(柘植めぐみ)。波田洋大の妖怪への偏見がネックにあります。今後の彼の動向が気になる所。ついでに言えば、彼と麦との関係も。
 第三話:黄昏に血の花を(友野詳)。"オードリィ" の狂気が描き切れていて面白かった。"ザ・ネット" は今後、"赤い靴" の敵として立ち塞がるのであろうか?それとも、味方となって肩を並べるのであろうか?「戦って、やられて、説得されて、味方になる」って言うベタな展開だけは止めて欲しい。

【シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔 蛇心の追
  評価点:65点  刊:角川スニーカー文庫  著:小川楽喜・川人忠明・清松みゆき  絵:あるまじろう
   今作は良かったよォ〜。収録作品は第一話に表題作『蛇心の追走(小川楽喜)』、第二話『運命はかく扉を叩く(川人忠明)』、第三話『苦しみの代償(清松みゆき)』の三作品。
 『蛇心の追走』。はい、つまらなかったです。結局何を言いたかったのか解からなかった。これ一作品で、今回の百鬼夜翔の点数を下げてくれてます。まだまだ新人さんみたいだけど、この先の成長次第ですね。面白くなるも、つまらなくなるも。今のままだと、落ち込んで行きそうな雰囲気。
 『運命はかく扉を叩く』。最高でした。思わず目頭が熱くなりました。魔人をああ言うふうに使うとは、少しやられた気分です。魔女・星野ひかりがこの先どうやって友情を育んで行くのか、注目です。難を言えば、「百鬼夜翔らしくない」と言う事でしょう。「オモシロけりゃそれで良い」が信条な俺としては目を瞑れますけどね。
 『苦しみの代償』。流石は大御所。文章のまとまりも話の流れも妖怪の扱いも立派です。シリーズ通して波田洋大の葛藤を一番巧く描いていたのはこの作品だと思う。新人さん達を、今後もそのパワーで引っ張って行って欲しいですね。
 しかし、今回の百鬼夜翔シリーズは新人さん&中堅さん達で形作る物だとばかり思っていただけに(以前にも大御所は出てましたけど)、今回清松みゆきが参戦してくれたのは個人的にビックリ。って事は、山本弘も返り咲きかァ?!

【シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔 水色の髪のチャイカ
  評価点:60点  刊:角川スニーカー文庫  著:秋山ぎぐる・高井信・山本弘  絵:あるまじろう
   ってワケで、期待に応えて(かどうかは甚だに疑問ですが)山本センセの返り咲き!!嬉しいやら嬉しいやら。嬉しいんですね。
 収録作品は『屍の夜(By 秋山ぎぐる)』『盗まれた町(By 高井信)』『水色の髪のチャイカ(By 山本弘)』の三作品。では、順を追って書評に入りましょうか。
 『屍の夜』。う〜ん。あと一歩。麦の葛藤がもう少し巧い事表現されていたらBetterだったんですけど(って、偉そうに)。どちらかと言うと、今後の桐子女史と橘老人の関係が気になるところですかね。あ、あと。桐子女史が実は単なる「ろくろ首」ではなく、実は「抜け首」との混血だったってのは、個人的に感心しました。成る程、面白い設定だ。今後の展開が楽しみですね。
 『盗まれた町』。……。始まりは興味津々だったんですけどね。物語が淡々と結末に向かっていて、ちょっと消化不良気味。もう少し盛り上がりが欲しかったけど……。まぁ、あまり派手な話ばかりでも、数多い読者を相手にするに当たっては問題があったのかな?
 『水色の髪のチャイカ』。う〜ん、やっぱり良いですねェ(『屍の夜』で使った「う〜ん」とは、微妙にニュアンスが違う)。チャイカの武器の科学的説明に関しては、既に真偽の確証が俺には無く、そこいらへんは微妙に読み飛ばしちゃってしまいましたけど(汗)。そろそろ俺は理系失格だろうか?話が反れましたが、妖怪としての意識が目覚めたばかりのチャイカの心の混迷が非常に上手に表現されている。また、妖魔夜行シリーズから作品に関わって来ただけあって、妖怪の取り扱いも繊細。メインとなる妖怪だけでは無く、当然人間の感情面での葛藤の描き方も上手上手。読んでいて作品に引き込まれる、とても味のある――そして、山本センセ「らしい」作品でした。難を言えば、チャイカみたいな激強な妖怪を出して、今後の作品に影響しないだろうか?と言う懸念が残る事と、『サーラの冒険4』を早く出してって所くらいでしょうか(笑)。
 まぁ、一冊の本としての評価に関しては、点数通りですかね?ビバ山本センセ。

【シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔 闇に濡れる獣
  評価点:70点  刊:角川スニーカー文庫  著:小川楽喜  絵:あるまじろう
   妖怪と人間の間に張られた、擦り切れそうな一本の糸をどのように手繰ろうか?どのように断ち切ろうか――?そんな葛藤と錯綜が根幹にある作品です。もしかして、これは『百鬼夜翔』シリーズのメインテーマなのでしょうか?妖怪ハンターとかの例もありますし。
 <妖精の丘> と <木偶の女王> が引き起こした <取り替え子チェンジリング> 事件が物語に1つの方向に導く道標の役割を果たしますが、それ自体は本当に「物語の道標」以上の役割を果たしていない、と言っても過言では無いでしょう。それよりも、妖怪と人間が持つ意識の軋轢を読み取る事に注視して読む事で、この作品の面白さが解かると思います。
 あまりに強烈な『想い』で自ら妖怪化した瀬河修へと言い放った波田洋大の言葉
  「……俺は、あそこの人たちのことが好きなんだよ。それだけだ」――
 洋大は洋大なりに、自分で問題に直面し、真剣に考え、悩み、そして成長していっているんだな。そんな彼の成長が垣間見える言葉だった。
 さて、今後の見所は、<バロウズ> と <ナイト・フォッグ> がどのように対立していくのか、そして、決着を付けるのか。見物ですね。前シリーズの <ザ・ビースト> に続く、今シリーズの悪の親玉なのだろうか?
 あと、瀬河の背中に彫られた妖怪、もしかして『シ号兵器(黒焔)』なのだろうか?(詳しくは『妖魔夜行 魔獣めざめる』を読んで下さい)。
 最後になりましたが。うん。やっぱり麦が可愛い。

【シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔 蒼ざめた森の怒り
  評価点:50点  刊:角川スニーカー文庫  著:三田誠・小川楽善・友野詳  絵:あるまじろう
   あ〜、全体的に今一。『狂う傷』『虚構の囚人』『蒼ざめた森の怒り』の全三作。
 『狂う傷』(著:三田誠) "聖痕スティグマ" "早坂人形" の組み合わせは目の付け所が良いと思った。まさか、「傷痕」そのものが妖怪とはね。恐れいりました。で、物語自体は、それなりに、って感じでした。
 『虚構の囚人』(小川楽善) これは、途中途中は中だるみですが、最後の最後で「人間の弱さ」を見せ付けてくれる作品でしたね。人生の最期で、城塚老人は、本当に「人生の敗北」を味わっている事でしょうね。出来ればそんな人生、味わいたくはないです……。ところで、"<虚構の囚人>" の中の矛盾が、俺には全然理解出来なかった。何がどう矛盾していたのだろう?未だに謎だ。
 『蒼ざめた森の怒り』(友野詳) いやぁ、単純に「ワケ解からない」でした。いや、物語の流れを追う事も難しくないし、こねくり回した謎が犇めくワケでもないんですがね。なんだか釈然としないストーリー展開でね。何が釈然としないんだろうか?多分、風花とルゥの行動に「意義/意味」が見出せなかったんだろうなぁ。
 まぁ、全般的にボーダーラインギリギリかそれ以下か……って感じで。まぁ、本当に暇潰しレベルの作品でした。

【シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔 空から奴がやってきた
  評価点:45点  刊:角川スニーカー文庫  著:川人忠明・北沢慶・友野詳  絵:あるまじろう
   今回も今一だったなァ……。『空から奴がやってきた』『魂の求める場所』『光の檻より来たれ』
 『空から奴がやってきた』。魔女少女・星野ひかりを主人公に据えた川人忠明氏の作品。蛇心の追走収録の「運命の扉はかく叩く」を読んだだけに期待していたんですけどねェ……話がありきたりで面白く無かったです。話の本質に関係無い要望を言うと、ジョニー・ワンダーの真面目な性格をもっと上手に描いて欲しかった。
 『魂の求める場所』。新キャラクターとして先祖返りの「雪女」の中西夕奈と、霊剣「蠎薙剣おろちなぎのつるぎ」のナギが登場。今後はジェラルドとナギからダブルパンチを受け続けるだろう波田洋大の受難が楽しみな所。
 『光の檻より来たれ』。妖怪ネットワーク <赤い靴> が運営するホテル <スーリエ・ルージュ> のオーナー朱音夕姫の活躍するお話って、実は初めてじゃないだろうか?まぁ、お話自体には大した面白みは無かったですが、敵の妖怪博士ドクター・エーベルシュタインの胸糞悪さは上手に描けていました。
 全体的に質が高くなかったので残念でした。百鬼夜翔シリーズはこう言った質の高低差が激しいから、購入する時にドキドキ物です。ってワケでして、次巻に期待しましょう。

【シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔 暁に散る翼
  評価点:65点  刊:角川スニーカー文庫  著:柘植めぐみ・山本弘・友野詳  絵:あるまじろう
   麦ちゃんがかぁいぃ〜〜〜。いや、違いますよ。違いますよ。ロリコンじゃないですよ。
 『虹のかなたへ(柘植めぐみ)』『茜色の空の記憶(山本弘)』と表題作『暁に散る翼(友野詳)』の三本の短編から成る短編集。今回のテーマは「記憶・想い出」と言った所でしょうか?
 虹のかなたへ  お暇をもらう事になった麦への想い出作りの為に街に繰り出した波田洋大と麦。しかし、洋大は麦を置いて見知らぬ女と町の中に消えて行った……。冒頭の壊れた発言はこの作品からのセリフ。「また……ふたりで出かけてくれますか?」の一言。それは思いからか、想いからか。洋大は果たして、麦からの重い言葉をどのように受け止め、身を振り行くのだろうか?いや、麦が可愛いです(←しつこい)。
 茜色の空の記憶  いやぁ〜〜。流石は山本先生!と言いたい所ですが、作品の流れが非常に解かりにくかった。まぁ、作品の構成上仕方の無い流れ方だったとは思うんですけど。それでも、やはり目の付け所、妖怪の使い方とかは感心します。洋大は今後、「妖怪」と「人間」とどのように付き合っていくのでしょうか?
 暁に散る翼  暁に散ってしまった翼。石動に代役を任せたのは、ただ「仕方なかったから」か、最期に人間を信じてみようと思ったからか。散った翼が空を飛ぶ事は、もう――無い。哀しい、悲しいお話です。だって、『死』があまりに唐突で、突拍子も無いものだったから。まぁ、現実は結局そんなモンなんでしょうけど。
 全体的にテーマ性がはっきりとしていて読みやすかったです。

【シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔 黒き蟲のざわめき
  評価点:70点  刊:角川スニーカー文庫  著:川人忠明・友野詳・清松みゆき  絵:あるまじろう
   全三話構成。ストーリーの要は「命」について。
 今回の見所は、川人忠明氏著『忘れない絆』。"魔女" 星野ひかりに会い、過去の清算をしようとしたひかりの幼馴染 妹尾優作は、不運にも飛行機事故によりその命を落とした。しかし、強すぎるその「想い」が、"死神" を引き寄せた。
 "死神" が優作の想いを叶えさせるくだりと、ひかりの淡い初恋の思い出は甘酸っぱく切なく、「川人」らしさに溢れる作品でした。が、物語のラストで "死神" がひかりに想いを寄せ始める件は、物語として冗長だったような印象を受けました。
 他『影は死の門に(By 友野 詳)』『黒き虫のざわめき(By 清松 みゆき)』の2作品は、面白かったのですが、語る程の部分があるワケでも無く、な作品でした。ああ、あと、ルゥと洋大の隙間が狭くなった事を意識し始めた麦との三角関係が今後楽しみです。
追記:ルゥがワヤンの死に流した涙を見ていると、何と無く「よ……妖怪にだって兄弟愛はあるんだーー!」(サンシャイン風に)って思いました。いや、思っただけで共感を求めるつもりはありません。

【シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔 昏い霧に眠る街
  評価点:65点  刊:角川スニーカー文庫  著:北沢慶・柘植めぐみ・友野詳  絵:あるまじろう
   ん〜〜。面白かったんですが、もう一つインパクトが欲しい。そんな感じでしたかね。全体的に。
 後書きにて、今巻のテーマは「心」とあったのですが、個人的には「妖怪の正体を知った人間の心」って言うのが根幹にあったのかな?と思いました。それでは、各話について一言ずつ。
 『昏い霧に眠る街(By 北沢 慶)』 風花の正体を知った美姫の行動は、まぁ予想通り。ってか、王道?個人的にはそれよりも、雷蔵に彼女ができた事に嫉妬やきもちを妬く風花が良かった(←馬鹿)。
 『わが古き名にかけて(By 柘植 めぐみ)』 非常に珍しい寺尾おじさん焦点のお話。人間として生まれながら、大百足としての血に目覚めた寺尾の苦悩と、開眼を描いた作品。寺尾のマイホームパパな日常と、大百足=妖怪としての生き方の対比――対比とは違うような気がしますが――が良い塩梅に描かれていまいした。面白かったです。
 『深紅に染まる幻(By 友野 詳)』 あああ〜〜。結構痛いですねぇ〜〜〜。俺自身、何かを決定すると言う行動に苦手――と言うか、更にネガティブな感情を持っていますから。もしも俺自身がこの赤帽子レッド・キャップ=丹藤に襲われたら、きっと殺されていたでしょうね……。とまぁ、自分自身になぞらえると、大変胸に痛い作品です。
 とまぁ、簡単にですが、以上。

【シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔 真夜中の道化師
  評価点:65点  刊:角川スニーカー文庫  著:川人忠明・清松みゆき・友野詳  絵:あるまじろう
   ラストスパートへ向けての助走パート。そんな位置付けの今巻。
 『真夜中の道化師(By 川人 忠明)』 魔女・星野 ひかり主人公のほのぼのストーリー。今までの心温まるお話に較べると、幾分とパワーダウン感を否めません。選ばれた題材も、向かうであろう結末も、結末に向かうまでの経過も、どれもこれもが使い古された物ばかりで、どうにもこうにも「焼き増しされた物語」と言わざると得なかった。真夜中の道化師とひかりの会話、夏見が道化師の見せる夢から気付くまでの過程も、なんだか有り合わせのパズルを無理矢理くっつけたような齟齬を感じた。見所と言える場面も無く、流石にこれは辛口評価にならざるを得ないかな。そんな感じ
 『魔蟲の再来(清松 みゆき)』アイタタタタタ……。各種展開に思わず呻いてしまいそうなイタさが内包されていました。何だ『ラブラブスイート不思議パンチ』って。
 それでも、前半は中々良い感じに物語が進められます。偽エニグマタウンの登場、名執 桐子の淡い期待と絶望、"エニグマ" 作成者の登場。そう、前半戦は面白要素が盛り沢山だったんですが、後半戦からダメ。桐子の積極的なキス攻撃とか、前述のラブラブ(略)パンチとか。桐子はもっとこう、クールな仮面の中に隠された熱い情熱みたいな恋をして欲しいんだぁぁぁぁ!!って、ンな事言われても清松氏も知ったこっちゃないでしょうけど。
 『そして霧は広がりゆく〜ロング・プロローグ〜(By 友野 詳)』 物語が中途半端に終わっているのが、「ロング・プロローグ」と言われる所以。次への展開が、非常に期待されます!蠎薙剣おろちなぎのつるぎに憑かれた守田 律子、その律子に斬り付けられた日野山 麦、「自分の生身を探す」と言った "ザ・ネット" の状況、守田 林檎を襲った妖怪の正体。期待要素満載のまま以下続巻!ズルい!ズルいぞ友野 詳!これで次巻がつまらなかったら赦さないぞ!ってか、麦はどうなるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!(絶叫)

【シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔 霧が閉じる黄昏
  評価点:50点  刊:角川スニーカー文庫  著:友野詳/グループSNE  絵:あるまじろう
   真夜中の道化師の『そして霧は広がりゆく 〜ロング・プロローグ〜』と、黄昏に狂える鬼よの各エピソードからの続き。これにて百鬼夜翔も終了の長編小説の上巻。つまり、アレです。まだ終わってません。
 話は、上記4作品からの続きであるせいか、いくつもの並行ストーリーが同時に進行していて、正直読み難い。それぞれの平行ストーリーが最終的にどう結びついていくのかを楽しもうと思ったら、今巻で各ストーリーのメインが全員終結してしまってるし……。恐らくは、下巻は普通な展開で読めると思うので、そちらに期待したいですね。
 今巻はこの程度。あとはそうですね……。麦と律子の恋のバトルが気に成ります(結果は見えてますが、経過が)。

【シェアード・ワールド・ノベルズ 妖魔夜行 げんの巻
  評価点:60点  刊:角川スニーカー文庫  著:山本弘・清松みゆき・友野詳・西奥隆起  絵:青木邦夫・森木靖泰
   唐突なる妖魔夜行の復活巻。百鬼夜翔シリーズの前身シリーズ。古参方の過去未収録作品集、と言った感じでしょうか(違うか……)。
 全五作品。『まぼろし模型(山本弘)』『虚無に舞う言の葉(友野詳)』『未完成方程式(清松みゆき)』『孤高(西奥隆起)』『どっきり!私の学校は魔空基地?(山本弘)』。内一作品がシェアードワールドのTRPGリプレイ作品。最後の『どっきり!〜〜』なんだけど……タイトル、どうにかならなかったんですかね?(笑)
 『まぼろし模型』。尊敬する山本弘先生の作品。何て言うのか、「マニアック」ってのはこう言う方の作品を言うんでしょうね。それとも、単に過ごした青春時代のジェネレーション・ギャップだろうか?プラモデルの所らへん、もうワケが解からなかった(苦笑)。俺も幼少の砌にはある程度遊んだ物だけど、一つ一つの作品なんて覚えてないからなァ……。と話がズレてる所を無理矢理戻して、作品感想。妖魔夜行シリーズにありがちな妖怪同士のぶつかり合いは一切無い作品でした。が、モチーフにしたい事は確りと描き切られていて、読み終わった後に心に残る感慨は深いです。
 『虚無に舞う言の葉』。派手なアクションシーンは無く、話の中で語られるべき事も無い(解からないだけかな?)作品でしたが、それなりに楽しめました。文子と彼氏のほのぼのとした逢い引き(笑)シーンが、少し良かったです。
 『未完成方程式』。理系人間には楽しめます。理系嫌いにはちと厳しいかな?だから俺は楽しめた。カオス理論やら確率麻雀やら、そこいらへんで楽しめる人間には楽しいでしょうね。
 『孤高』。いまいち消化不良。中途半端感が否めなく、もう少し作品を掘り下げて欲しかった。多分「必要無い」としてカットした辺りがあるんでしょうが、逆に俺としてはそこいらへんを語って欲しかったと思う。
 『どっきり!私の学校は魔空基地?』。冒頭でも言ってしまいましたが、TRPGリプレイです。感想は「どうでも良いや」な作品。セッションが短かったのか原稿が足りなかったのか解からないけど、面白味が無かったなァ。山本作品だったから楽しみにしていたのに、残念。
 って感じですね。因みに、『まぼろし模型』『虚無に舞う言の葉』は過去に角川mini文庫にて公開されていた作品を再収録して作品です。

【紫骸城事件 inside the apocalypse castle
  評価点:90点  刊:講談社NOVEL  著:上遠野浩平  絵:金子一馬
   形としては殺竜事件の続編に当たる異色のファンタジックミステリー。でも、今回は物語のメインキャラクターにはEDもヒースロゥもレーゼも登場しません。今回のメインキャラクターは、<限界魔導決定会> に立会人として召集されたフロス・フローレイド魔導大佐と、同じ立場で召集されたキラストル・ゼナテス・フィルファスラートとミラロフィーダ・イル・フィルファスラートの双子姉弟――戦地調停士 <ミラル・キラル> ――の三人だろう。ところで、上遠野さんはこのシリーズを通じて、全部で23人しかいない戦地調停士を全員書いたりするんだろうか?もしもそうなら……多分、この23にも意味があるんだろうなぁ。
 300年の昔、最凶の魔術師として知られた "リ・カーズ" ことクラスタティーン・フィルファスラートが作り上げた呪詛集積装置として機能する呪われた城砦、紫骸城。現在ここは、魔術師達がその腕を競い合う <限界魔導決定会> の会場として用いられていた。しかし――この紫骸城で起きた、魔導士鏖殺事件。一人目の被害者は、前大会優勝者たるニーガスアンガー卿。彼は、大会会場への転送呪文の直後、「バラバラになって」殺された。二人目はラマド師。彼は、試合前に氷で背中を貫かれていたにも関わらず闘い、試合後事切れた。三人目は――果たして誰か?一夜明けた朝、密室の中で大量の魔術師が炎に焼かれて死んでいた。
 まぁ、これが物語の導入。その他の詳しい所は、素直に読んで下さい。物凄く面白いです。特に、"印象迷彩呪文" の使い方とかは、読んでいてもう感動もの。
 んで、幾つかの不満点――と言うか、軽い突っ込み。魔術師が焼き殺されたあたりの説明は、結構無理矢理だったかな?感がありましたってのが一つ。もう一つが、物語の終了後に起きたリ・カーズの復活(正確には「復活」じゃないんですが)。ちょっと蛇足かな?と思いました――しかし、もしかしたらこの復活が、今後のシリーズ展開に深く関わってくる可能性が大きいと期待してしまうのが、上遠野作品なんですよね。だから、それに関してはシリーズが完結するまでは一応楽しみです。
 あと、戦地調停師 <ミラル・キラル> は良いキャラクターです。いや、人間的には腐ってるけど(それも、どれを持ってして「人間的か」と言う観点に立ってしまうと、何とも言えなくなってしまうのですが)。何しろ、彼らは「一つの戦争を終わらせるために、その戦争によって生じた犠牲者の倍以上の犠牲者を出す」戦地調停士ですから(参照:殺竜事件)。

【失踪HOLIDAY
  評価点:80点  刊:角川スニーカー文庫  著:乙一  絵:羽住都
   『しあわせは子猫のかたち HAPPINESS IS A WARM KITTY』及び表題作『失踪HOLIDAY 失踪×ホリデイ』から成る、切なくも優しい、心温まる短編集――。
『しあわせは子猫のかたち HAPPINESS IS A WARM KITTY』 常に暗く陰鬱に物事を考えてしまう『ぼく』は、家族からさえ逃げるように遠くの大学を受験し、一人暮らしを始めた。一人暮らしの為に伯父に借りた一軒家は、少し前まで雪村サキと言う名の女性が住んでいたが――殺されたらしい。残っているのは、身寄りの無いサキが使っていた、引き取り手の無い家具。そして、サキが飼っていた白い子猫。
 『ぼく』は明るい場所が嫌いだった。爽やかな風の匂いが嫌いだった。だから家ではカーテンを閉め、窓を閉ざし、ただ自分の世界に篭っていたかった。なのに、朝起きるとカーテンが開いていた。窓が開け放たれていた。どうやら……殺された雪村サキは、子猫と一緒にまだ、この家に残っているらしい。幽霊、とでも言うのだろうか?とまれ、こうして始まった、二人(?)と一匹の奇妙な共同生活は始まった。
 暗くジメジメとした性格の『ぼく』が心の中で広げる暗澹とした葛藤と、それを少しずつ切り拓いていくユキとの触れ合いは、黒と白の協奏曲。この協奏曲が成り立つのは、乙一と言う作家が持つ文章力のおかげでしょう。文体自体は基本的に暗く深いのに、決して読み手に鬱の印象を与えるだけでは無く、時には優しく包み込むように読者の心を暖かくする、不思議な印象を持つ文体です。
 この『しあわせは子猫のかたち HAPPINESS IS A WARM KITTY』、これだけなら個人的には90の採点を与えたいです。
『失踪HOLIDAY 失踪×ホリデイ』。上記作とは違い、こちらはほのぼの狂言誘拐(←意味不明)。菅原ナオが、父の本当の想いを確かめる為に仕組んだ狂言誘拐を通して、小間使いのクニコと友情を深めていくお話。
 ナオの仕組んだ狂言誘拐が、まさかああ言う方向に進んでいくとは……と、ちょっと意外でした。
 乙一さん、作品の中に喜怒哀楽を詰め込むのが上手です。

【自転地球儀世界 地球儀の秘密
  評価点:70点  刊:徳間デュアル文庫  著:田中芳樹&一条理希  絵:緒方剛志
   持ち前の自己主張の強さが災いして「週間東洋」編集部を辞職した元記者・白川周一郎は、ある冬の日、奇妙な骨董屋で、同じく奇妙な地球儀に出会った。一見ごく有り触れた地球儀なのだが、よくよく見ると「地球」儀では無い。もっと別な何かを形作った、少なくても実用的では無い地球儀。
 興味を惹かれ、\20,000の大枚はたいてそれを購入した周一郎は、不登校児の姪・多夢たむに言われて、その地球儀が勝手に自転している事を知る。実はその地球儀、こことは違う別世界への道を拓く、ザ・ゲートだったのだった。
 ザ・ゲートの秘密を知るシグマ社の追手から逃れる為に、ザ・ゲートを潜り別世界へと足を踏み入れた周一郎と多夢を待ち受ける運命や如何に?!
 これ、実は1990年に角川から発刊された作品の加筆修正版らしいです。それは兎に角、流石は巨匠・田中芳樹。一つ一つの書き込みが綺麗で丁寧で、独特の皮肉ぼったい文体が魅力的。ただ本音を言うと、「文章、まだ半分くらいまで削れたな」。まぁ、それら半分を本気で削ってしまうと、周一郎・多夢を含めた登場人物の魅力も半減してしまうでしょうが。飽く迄も、「物語を追うに当たって」の判断の下では半分削れた、ってだけです。
 まだこの巻では主人公二人が異世界へと旅立っただけです。今後、この二人の活躍に胸躍ります。

【自転地球儀世界 カラトヴァ風雲録
  評価点:85点  刊:徳間デュアル文庫  著:田中芳樹&一条理希  絵:緒方剛志
   はふぅ〜〜。流石は巨匠・田中芳樹。文章の流れ、言葉の使い回し、物語の組み立て。全てにおいて高い水準を保つ作品でした。地球儀の秘密から地球儀世界に入ってきたばかりだと言うのに、その圧倒的な世界観の広がりを展開し、否応無く読者をその世界に引き釣り込んでくれます。
 物語は今回、多夢と周一郎は関係ありません。今後深い関わりを持つであろうカラトヴァの摂政殿下グントラムの下克上・立身出世の物語。主君殺しの大罪を犯し、国を逃れ、別の国で身を立てる、野心に充ち満ちたグントラムの半生は圧巻である。
 3巻以降でグントラムと多夢・周一郎が出会うが、それがどのように物語を動かすのか?そして、グントラムを父の仇と見た女王ベリセーヌの復讐が、どのように成し遂げられる(or 潰える)のか?3巻の発売が待ち遠しいです。
 最後に。三人の魔女も素敵です。魅力的です。

【自転地球儀世界 異世界からの訪問者
  評価点:85点  刊:徳間デュアル文庫  著:田中芳樹&一条理希  絵:緒方剛志
   周一郎は多夢の事をどう言った意味で好きなんだろうか?……ロリコン?
 はい、微妙に論旨の違った部分を語りました。地球儀世界にやって来た多夢と周一郎。地球儀世界の住人に捕らわれの身になるも、彼らが喋る「日本語」が崇拝する仙女神フェラリーラの言葉であるとして、多夢=仙女神フェラリーラ、周一郎=仙女神フェラリーラの従者として、丁重に迎え入れられる。
 そして、クル病・風邪の二つの病を周一郎の知識でどうにかこうにか治す事に成功し、本格的に仙女神フェラリーラとしての信頼を勝ち得た。しかし、それを良く思わないのがカラトヴァの為政者グントラム。彼の知略により多夢・周一郎は魔女の住む山へと「仙女神フェラリーラとしての修行」と称して追いやられてしまう。
 そして、彼らは三人魔女&ファビオンと出会う。
 物語自体はそこまで。あとは、IV以降の引きとして、楓子が地球儀世界に保有の軍隊を送り込む所で終了。近代平気に身を固めた軍隊を相手取って、周一郎は、ファビオンはどのようにして闘うのか?見物です。
 とまぁ、簡単な粗筋はこんな所で、物語とは直接関係無いお話をしますと、キャラクターが一人一人個性的で面白いです。しかも、個性的と言っても、スレイヤーズみたいく「イロモノ」的個性ではなく、地味で人間的なのですが、その中に一人の「人間」が確立される個性を持っていて、大変好感が持てるものです。周一郎しかり、グントラムしかり、ベルタしかり、です。
 その個性派キャラがどのように地球儀世界で活躍してくれるのか。今からIV巻が楽しみです。

【シャープエッジ stand on the edge
  評価点:45点  刊:電撃文庫  著:坂入慎一  絵:凪良(nagi
   後書きにも書いてありましたが、「矢鱈目鱈と強い少女がナイフを振り回して復讐に燃えて人を殺しまくる」作品です。
 育ての親・ハインツを殺された少女・カナメは、その復讐を誓い、ファミリーに牙を剥く。ハインツを殺したファミリーの切り札ワイルド・カード、魔女・シルビアを殺す為、その手に持ったナイフを振るうと意を決した。そこから、少女の戦いの幕が上がる――のですけど、どうにもカナメの復讐心の強さが伝わってこなかった。どっちかと言うと、カナメにカルロを殺されたシルビアの心境の方が、胸に来るものがありました。「頑張れ、シルビア」とか思っていたけど、やはり主人公と敵役と言う立場の違いには勝てず、シルビアは敢え無く散ってしまいましたけどね。勝機を掴むも天運に見捨てられ、敗因を打ち消すには想うが故に捨てられず、カナメの兇刃の前にその命を散らしたシルビア――彼女の方が、主人公向きな描かれ方をしていた、と思うのは、俺の勝手な思い込みだろうか?

【灼眼のシャナ】
  評価点:45点  刊:電撃文庫  著:高橋弥七郎  絵:いとうのいち
   ああ〜。昨今のライトノベルの王道を突っ走ってる作品。バカ強いけどどこかクールなヒロインと、それに付きまとうダメ少年。少年は情けないなりに健気な強さと、少女の心の氷を少しずつ溶かしてやれる温もりを持っていた。そんな少年に惹かれつつ、少しずつ変わって行く自分に戸惑いながらも満更でもない少女。要約すればそんな話。王道でしょ?
 別に王道走るのがダメだとも、突拍子が無ければダメだとか、そんな事ぁ言ってませんよ。例え王道の設定、王道の展開、王道のテンポであろうと、その中に確かな「何か」が集約されていれば、それは「面白い作品」ですから。では、この作品はどうだろう?と問えば、回答は「まぁ暇潰しには」。二、三の苦笑交じりのほのぼのシーンとかは、まぁそれ程捨てたモンでもありません。でも、ねぇ……。
 まぁ、ベタな展開、ベタな青臭さ、ベタな優しさを求めている方には楽しい作品では?ま、好みの問題ですね。

【呪禁官】
  評価点:30点  刊:祥伝社NON NOVEL  著:牧野修  絵:米田仁士
   思った事。著者の牧野さんは、「ファンタジー向きじゃ無いな」。寧ろ、文学小説向き。
 まず、文章は一文一文にまとまりがあって、しかも短くて、読み易い。だから、読んでいると情景とかはスラッと頭の中に入って来るんだけど、全体的に印象が淡白で、入ってくるそれらの情景は、何だか靄みたいにあやふやで、想像は出来ても創造は出来ない。その印象の弱さの原因は、文章の書き方が教科書的で、上手なのだけど報告書のように淡々としているせいだと思う。だから、かな?「ハメを外してのびのびとした作品を楽しむ」はずのファンタジー作品が、今一面白く無かった。初めに言った「ファンタジー向きじゃ無い」って言うのは、それが理由。
 内容。舞台は、現代科学社会に魔術が浸透した日本。主人公は、魔術を犯罪に利用する者を取り締まる呪禁官を目指す学生・葉車創作――通称ギア――。天使の軍勢を従僕にする事が可能である言われる三種の神器「プロスペロの書」を狙う蓮見と、魔術を憎み鋼鉄の体を手に入れた科学集団ガリレオが一員・米澤浩吉の三つ巴。
 はい、あまり面白く無かったです。まず、初めに言った通り、全体的に淡々と物語が語られ、山場でも盛り上がりを見せない。そして、勧められる物語にはいくつもの「無理」が存在する。例えば、蓮見は「プロスペロの書」を呪禁官学校の校長室から盗み出す為に、ギアの友人である辻井貢にアプローチして呪符を校長室に忍ばせるように言ったが、何でその相手が貢だったのか?確かに貢は金に困っていたが、悪事に手を染めるような人間では無い。彼が罪悪感との葛藤する間に、計画の進行に支障を来たすのは目に見えていたはずだ(貢の銀行講座を調べられるだけの情報収集能力があれば、彼の人と為りを調べられなかったはずが無い)。だったら、金の為には犯罪行為を厭わないような馬鹿にそれを頼んでおいた方が良かったハズだ。貢にその呪符が託された理由が語られず、しかも蓮見は「断ったら殺す」とか言って無理強いして……。わからん。そして、蓮見が呼び出した天使がギアに取り付いた理由もわからない。結局、どうしてギアの背中にくっついてたんだろう?
 こういった「無理」が所々に目立ち、しかも理由が全く語られない。仮に誰かの予想や著者のナレーションで「単なる偶然ッス!」って言われれば、合点がいかないまでも読み飛ばしていただろうけど……。
 まぁ、そう言う消化不良が無くっても、個人的にはストーリーもありきたりだと思うし、大した作品じゃなかったと思いますけどね。他の方々はどうですか?

【新ソード・ワールドRPGリプレイ集1 進め!未来の大英雄
  評価点:65点  刊:富士見ドラゴンブック  著:秋田みやび/グループSNE(監修:清松みゆき)  絵:浜田よしかづ
   Sword World、満を持しての復活を賭けた新装展開。で、始まったのが懐かしのリプレイ。正直ほとんど期待していなかったのだが……これが思ったよりも面白い。面白いのだけど、やっぱり従来のSword Worldとは何処かしらの雰囲気が違う気がする。だから、「Sword Worldとして」はちょっと不満。
 新米GMを据えたリプレイですが、やっぱりマスタリングに少なからずの稚拙さが残る。例えば、サイコキネシスで動かされていた魔法の槍を攻撃したら叩き折られたんですが……魔法の品物は折れないって。勿論エンチャントされた魔法の種類にも因るだろうけど、付与された魔力は単純に+1ボーナスの強化魔法だったから折れないはずだ。序でに言えば強化魔法は槍の穂先だけでなく武器全体に掛けられている筈だから、やっぱり「柄が折れる」事は無い。他にも新米GMの秋田さん自身が自覚するよう、伏線の与え方が前任の清松さんや山本センセに比べても下手だ(まァ、それでも標準レベルで見てみればそうでも無いんですケドね)。あと、第三章のプレイ前の独り言で秋田さんはこう呟いた。
   屋内で冒険となると……(考え中)……お化け屋敷かな?
   とするとその原因は幽霊……?
   それじゃつまんないかなあ?
 Sword Worldに精通してりゃ、それだけの情報でオチが読めますて(笑)。まァ、突然GMを任されてルールを完璧に把握しているわけでは無いので仕方が無いと言えば仕方が無いけどね。
 と、ここまでは欠点並べて。内容自体はそれなりに面白かったです。プレイヤーがいつもの六人から五人に減っちゃったのが何でか微妙に残念だけど。プレイヤーもなかなかに抜けている所があって、GMの稚拙さと相俟って面白かったです。
 初めに言ったよう、今までのリプレイと比べると雰囲気が違います。どう違うかと言うと、今までのリプレイが少し苦味のある燻し銀セッションであったのに対して、今回のは甘味にとろけるほのぼのセッション。それもまたちょっと残念。

【新ソード・ワールドRPGリプレイ集2 つかめ!明日の大勝利
  評価点:75点  刊:富士見ドラゴンブック  著:秋田みやび/グループSNE(監修:清松みゆき)  絵:浜田よしかづ
   前巻に続いて新米GMが送るSword Worldリプレイ集。今回むっちゃ笑いました(笑)。赤貧ハーフエルフのマウナの不幸さには涙が出ますね、はい。ウェイトレス姿で哀しみから逃げ出すマウナと、その彼女の不幸を馬鹿笑いするヒース&ノリスの絵は最高でした。
 GM秋田みやびもGMとしてのスキルもアップしているようで、少しずつそれらしくセッションをこなしています。まだまだテーブルトークの醍醐味「キャラクターの突拍子の無さ」に振り回されている感も無くはないですが、それはそれで御愛嬌。
 一巻を抵抗無く受け入れられた方にはお勧めの一冊。逆に一巻を受け入れられなかった方には勧められません。一巻よりもほのぼのさが強くなっていますからねェ。

【新ソード・ワールドRPGリプレイ集3 目指せ!奇跡の大団円
  評価点:70点  刊:富士見ドラゴンブック  著:秋田みやび/グループSNE(監修:清松みゆき)  絵:浜田よしかづ
   そろそろ「新米」と呼ぶと失礼にあたるGM秋田みやびが送るSword Worldリプレイ集。今回も今回で目一杯笑わせてもらいました。では、登場人物紹介をしつつも、軽く作品に触れてみましょう
 イリーナ。お〜い、必要筋力24Gソード(打撃力29, クリティカル値10)に、「ファイアウェポン(打撃力+10)」+「ファナティシズム(攻撃力+2 and 回避力-2)」+「強打(追加ダメージ+2 or クリティカル値-1, and 回避力-4)」は反則でしょう。ちょっと見てみると、追加ダメージがおっつかないけど、威力が「メテオ・ストライク(打撃力50, クリティカル値10)」じゃん(笑)。しかも、プレートメイル(防御力29)着てるから、ほぼ無敵だし。多分、ノリ的に作ったキャラクターなんでしょうけど、筋力24は反則ですね、うん。――面白いから、別に良いんですケドね。
 ヒース兄さん、最近邪悪。まぁ、白粉エルフのスイフリーよりゃなんぼかマシだけど。レアな焼き鳥は未だに引っ張っているけど、笑えます。ティンダーを消費精神力1で掛けられるようになったのは成長ですね。でもそのうちこいつ、夜道を背中からプスリといかれるんじゃないのか?(笑)
 ガルガド。実はパーティーの総指揮官?ゴールド氏を勧誘できなくって残念だったねェ……。ところで、今回脇役として登場したNPC「ギル」「マッカ」「ゼニー」「ゴールド」「ルピー」って、それぞれ某ゲームの通貨単位ですよね。「ギル:FFシリーズ」「ゼニー:ドラゴンボール(?)」「ゴールド:DQシリーズ」「ルピー:ゼルダの伝説(?)」。んでは、「マッカ」って一体?
 マウナ。今回は出番が少なかったな。この赤貧ハーフエルフ、結構好きなんですケドねェ。一番の活躍は、成金オヤジのエリックさんを御するところでしょう。
 ノリス。今回一番活躍。きっと、「パーティーが四人」だとか「ゴールドをスカウトしよう」とか言われて、本気で我が身を案じたせいだろう(笑)。パーティーから放り出されないようにするためには、必死で自分をアピールしなくちゃね。
 こんなドンチャカ連中の冒険談。読めばきっと笑えます。
 でも……やっぱり古い時代のSword Worldファンとしては、世界観と雰囲気のノリの違和感に、やっぱり淋しいと思ってしまう今日この頃……。

【新ソード・ワールドRPGリプレイ集4 狙え!魅惑の大出世
  評価点:70点  刊:富士見ドラゴンブック  著:秋田みやび/グループSNE(監修:清松みゆき)  絵:浜田よしかづ
   うん。まぁ、やっぱり見所はヒースの嫌がらせでしょう。いまだにパーティー仲間の過去の失敗をネタに引き摺って、これでもか!と言わんばかりに他人の神経イラつかせる。笑えます。ところでヒースよ。お前も最近、冒険各所で「役立たず」感を醸し出してるぞ(笑)?
 さてさて、新Sword World RPGリプレイ集の最終巻。どうにもシナリオの質はどうかな?感が否めませんが、まぁ、TRPGにとってシナリオは二の次。シナリオを追いながらRPGを楽しむ事が何よりも大事です。そう言う意味では、秋田氏はその大任を見事にこなしたと言えるでしょうね。
 第10話「冒険だよおばあちゃん」。ノリス追い出し作戦の話です。特筆すべきはヒースの掌の返しっぷり。あの掌の返しっぷりは、映画『スパイダーマン(グリーンゴブリンが出てくるやつ)』の新聞社編集長並だ。
 第11話「はぐれ神官人情派」。ガルガドが説得に精出す話。特筆すべきは強盗団に向かってライトニングを撃ち放ったヒース――イリーナを巻き込んで――。いや、ヒース。アンタ、自分の呪文の特性忘れすぎ(笑)。ああでも、ブルスさん、可哀想だよな……。
 第12話「亡霊騎士は二度ドアを叩く」。マウナ養女縁組話。特筆すべきはマウナを無理矢理クラウスにひっつけて話をややこしくしようとしたヒース。でも、うん。マウナはあんなポッと出のNPCと引っ付いて欲しくないなァ。防御点決定ロールと生死判定ロールで1ゾロ2連続を弾き出したノリスは、無事旅発つ事に成功しました――まぁ、あの楽しい出目は「ヤラセ」だと思われても仕方ない感はあるけど――ダイス目の「ありえなさ」は、TRPGを経験していれば、何となく納得できます。
 なんだかんだでゴタゴタハチャメチャ、ほのぼのプレイをたっぷり堪能させて頂きました(笑)。
PS:そのほのぼのさに隠れて忘れがちだけど、パーティーのキャラクター達って敵の人間をかなり殺してるんだよなァ。あと、シナリオも実は結構暗い。気付いてました?

【新ソード・ワールドRPGリプレイ集5 決めろ!最後の大逆転
  評価点:55点  刊:富士見ドラゴンブック  著:秋田みやび/グループSNE(監修:清松みゆき)  絵:浜田よしかづ
   見所はズバリ、無駄に傲慢で無意味に高慢で無用に高飛車なキースクリフ。アノノリは、キースのプレイヤーの素なのか?それともキースと言うキャラクターの役作りなのか?非常に気になる所だ。
 集え!へっぽこ冒険者たち!でパーティーから外れたガルガドとノリスの代わりに入荷されたキャラクターは、本職バード/兼業シーフの芸能ドワーフ・バスと、何かを悟って冷静冷徹エルフマニアの期待の新鋭・エキュー。エキューが冒険者として妙に優秀で、このパーティーを基準に見ると少々異色。でもまぁ、エルフマニアってのは良いよ。うん、どこか通じるものがある。
 第13話「スイート・ノーム」。冒険者としてのへっぽこぶりを見事に発揮し、依頼失敗。
 第14話「二十四の珠」。第13話の尻拭いシナリオ。あの「9つの点を一筆書きで三回だけ曲がって全部なぞる」ってリドルにどうして時間が掛かったんだろう?かなり有名なリドルだから、すぐに解けても不思議は無いと思うんだけどな……。ヒースの投げ遣りな態度は、「プレイヤーは解法を知っているがキャラクターは知らないはずだから、プレイヤーとしての行動は慎もう」と言う態度の表れだったんじゃないだろうか?とか勘繰ってみたり。
 第0話「新米冒険者、旅立ってみる」。進め!未来の大英雄よりも前のプレシナリオ。かつて月刊DORAGON MAGAZINEで掲載されたシナリオですね。ここでもキャラクター達は未熟な冒険者ぶりを発揮します。
 第0話はこの際関係無いんだけど、相変わらずの下っ端冒険者っぷりを見せてくれます。
 内容に殆ど触れようとしないのはまぁ、点数通りの作品で、コレと言って触れておきたい点が無いからです。まぁ、キャラクター同士のやりとりは面白いんですけどね。

【新ソード・ワールドRPGリプレイ集6 賭けろ!世紀の大勝負
  評価点:50点  刊:富士見ドラゴンブック  著:秋田みやび/グループSNE(監修:清松みゆき)  絵:浜田よしかづ
   取り敢えず。レベルが上がるごとに役立たずになっていくヒースが謎だ。
 新米気分がいつまで経っても抜けない5人(イリーナ・ヒース・マウナ・バス・GM)と、妙に達者な1人(エキュー)の珍道中。……少しずつ点数が下がってきています。目新しさが抜けてきたせいでしょうかね。もう少しこう、頑張って欲しいです(←生意気)。
 第15話「新米の使いやあらへんで」 第十六話/十七話に続けるための導入シナリオ。特にシナリオに意味があったと言うわけではなく、本当にワイバーンを退治して村を救っただけ。それ以上でもそれ以下でもありません。――まぁ、「どうしてこんな所にワイバーンが?」と言う謎を残した、と言う程度の意味はありましたけども。
 第16話「老魔法使いに大切なこと」 村に隠遁していた老魔術師が残した遺産。それを子供達がそうとは知らずに使ってしまって村は小パニック!犯人は?そして、その原因は?ってお話。今回は第十六話につなげる為の要の人物スゲーナ(仮名)が登場した、くらいかな?目ぼしい所は。気になった所としては、村の近くに南瓜の化け物ジャック・オー・ランタンが出る事を知っていて、村人は何故それを放ったらかしておいたのだろうか?と言うこと。……村に近い沼にンな物騒なモンがいるって解かっていたら、冒険者なりなんなりに退治を頼まないのだろうか?重箱の隅突付きかなァ?
 第17話「ヤスガルン迷宮案内」 スゲーナの正体がわかります。が、個人的にはオフィシャルな場で竜司祭ドラゴン・プリーストを出して欲しくなかった……。いや、オフィシャルな設定として存在しているのだから、出しても問題は無いのですが、なんとなく竜司祭ドラゴン・プリーストって、ローカル・ルール的なイメージが(俺の中で)強いもので。それを出されると激しく違和感があるから。そゆ風に感じるのは、竜司祭ドラゴン・プリーストが設定だけしか存在していなかったSword World基本ルールの頃に遊んでいた俺くらいのものだろうか?
 ヒースのBB戦士は、どこまで増えるんだろうか?

【新ソード・ワールドRPGリプレイ集7 走れ!神秘の大森林
  評価点:65点  刊:富士見ドラゴンブック  著:秋田みやび/グループSNE(監修:清松みゆき)  絵:浜田よしかづ
   最近、ヒースへのツッコミ役が、イリーナからマウナにシフトしつつあるような……。いや、パーティー&GMから満遍なくツッコミを受けている、と言うお話も否定は出来ないのですが。
 相変わらず面白いは面白いのですが、新Sword Worldリプレイの世界観と、本家Sword Worldの世界観が、微妙に違うんですよね……。いや、舞台は全く同じフォーセリアなんですけど、何と言うか、ノリに僅かな齟齬を感じるんですよ。多分、昨今のファンタジー小説に見られる、『軽い』ノリが、GMの秋田みやびにこびり付いているんでしょうね。……悪くはないんですけど、少し寂しいです。
 第十八話「北の国へと」:微妙に一角馬ユニコーンの扱い方がSword Worldっぽくない。と言うのは、一角馬ユニコーンはあんなフレンドリーでは無いと思う。もっと気高く、崇高であるべきだと。まぁ、こう言ったSword Worldへの固定観念が、新Sword Worldと本家Sword Worldの世界観への齟齬へ繋がっているのだろう。あとはまぁ、いつものノリでホンワカしながら、化け物茸ファンガス退治して終了、でした。
 第十九話「プロジェクト×」:ヒースとジャギーの性格の似通りさが面白かったです。ヒース、いつでも破門準備OKですか?面白かった場面としては、ヒースの「くそう、手加減せずにあのクソ馬に乗れなくしておくんだった」発言に対する、イリーナ&マウナの大剣グレートソード治癒ヒーリングコンボが美味しかった。あとは、そうだね……バスの魅了チャームの呪歌に掛かったマウナ&ヒースのイラスト(P.182)が面白かった。
 第二十話「恋のから回り」:ヒース、矛鑓ハルバードGET!!矛鑓ハルバードを振り回したいがために黒曜石の人造狗オブシディアン・ドッグに噛み付かれるは、その傷が元で土砂に呑まれて死にかけるわ、相変わらず命を張った芸人エンターテイナー振りを発揮。……いつか死ぬぞ、本気で。
 今回の見所は、基本的にはいつものようにヒースのお茶目さ加減です。

【新ソード・ワールドRPGリプレイ集8 救え!かつての大親友
  評価点:65点  刊:富士見ドラゴンブック  著:秋田みやび/グループSNE(監修:清松みゆき)  絵:浜田よしかづ
   え〜〜、この巻でついにイリーナの筋力が人外突破(筋力=25)。どうでも良いんだけど、Sword Worldのドワーフって、実は筋力そんなに高くないんですよね。確かに平均値は人間に比べると高い(筋力平均:人間=14/ドワーフ=17)し、筋力最低値も高い(筋力最低値:人間=4/ドワーフ=12)ですが、最大値は人間の方が高い(筋力最大値:人間=24/ドワーフ=22)んですよね。――いや、最低値を見る限り、やはりドワーフの筋力はやはり高いかなァ? まぁ、筋力がどうだこうだはどうでも良いです。イリーナの筋力はどう見ても25には見えないとか、そんな野暮は今更言っても始まらないですしね。
 で、内容。
21話:スルーラブストーリー: 当パーティー最高のエルフフェチ・エキューがエルフフェチになった原因でもあるエルフのお姉様シルヴァーナ嬢登場。ですが、イラストはンなにも美人だとは思わなかったんで、そこらへんは頑張って脳内補完。
 今回の敵は鈴木土下座衛門バグベアード。因みにイリーナは熊抱殺ハグ・ベアー。バグベアードに勝利できるようになった彼らは、リプレイ第二部パーティーを超えているようですね。所で、バグベアードの金属破壊光線でガメル銀貨は本当に破壊されるのかなァ……。ここで言う「金属」って、どう言う定義の「金属」なんでしょうね?まぁ、別にどうでも良いんですが。
 あと、"眠りの雲スリープ・クラウド" との相性が悪いヒースクリフ君、どうやら "麻痺パラライズ" との相性が良い事が判明。
22話:盗賊進化論: かつてのパーティーメンバーである小僧(ノリス)&おやっさん(ガルガド)復活。パーティーに二人のドワーフってのは、バランス的にはどうなんだろう?……ああ、丁度良いかも。
 リプレイ第四部みたいに、過去の設定を中途半端に入れ込んだりしなかった分、胸中に残る濁った感触が無くて良かったです。
 デボン・ロンデル(白猫)のノリスが羨ましいです。ああ、そう言えば、デボン・ロンデルは『顔の無い』クランズのプリティアー――じゃなくて使い魔ファミリアーとの事らしいですが、ノリス=ロンデルの五感を通して、イリーナ達の行動は筒抜けじゃないんだろうか?とそう言う疑問を持ってみたり――どっちかって言うと使い魔ファミリアーの契約は「魂」との契約になるから、老人の体が使い魔ファミリアー扱いなのかなァ?だとすると、シアターで登場した遺失呪文 "人間使役ヒューマン・ファミリアー" みたいじゃのぉ。
23話:ザ!鉄腕!CRASH: ん〜〜。正直言うと、この回は殆ど面白みが無かったような……因みに、ガルガドさん復活は、この回からなんで悪しからず御了承下さい。
 面白いところ面白いところ……。精々、イリーナが鉄傀儡アイアン・ゴーレムとガチンコ勝負した所くらいかな?
 まぁ、そんな所。取り敢えず、ノリスの運命やいかに、って所ですかね。ノリスが体を取り戻せるのか?って所と、体を取り戻した後、エキューに串刺しにされたりしないだろうか?って所(笑)。

【新ソード・ワールドRPGリプレイ集10 名乗れ!今こそ大英雄
  評価点:65点  刊:富士見ドラゴンブック  著:秋田みやび/グループSNE(監修:清松みゆき)  絵:浜田よしかづ
   ……あれ?俺って実は、9巻の感想書いてなかったのか……?
 などとボケた所から入りながら。本巻にてリプレイとしてのへっぽこーずの冒険は終了。正直、最後まで「へっぽーこーず」の愛称が俺の中には定着しませんでしたが、まぁ良しとします。まぁ、色々ありましたが、各人の成長(特にGMの秋田嬢)が見れて、そう言う意味でも面白かったと思います。
 で、最終巻なのですが、最後は思い切った事しましたね、GM。まさかここでローンダミスとラヴェルナを登場させる――どころか、PLに演じさせるとは。一体どれだけの読者が思い描いていた御両人像が崩れ落ちたか。まぁ、俺個人としては大した思い入れも無いので無問題ですけどね。
25.5話:ケロ□?うん、そう: 第26話への助走章。ここでは物語自体は進みませんが、高レベルカップル登場。ラヴェルナの使い魔は、結局『ケロぴょん』で決定なのでしょうか?プレイ中は殆ど登場しませんでしたが、PLが忘れていたのか、秋田嬢が大先輩からの激怒を恐れて無かった事にしたのか。真相が気に成ります。
26話・表:あなたにだけしか見えない: ラヴェルナ=ヒースはどう考えても秋田嬢が「やってしまえ」と言っているようにしか思えません。まぁ、結果が面白ければそれで良しですが……後で乾されないで下さいよ、秋田嬢。あと、チビーナーズ。

【新ソード・ワールドRPGリプレイ集NEXT1 ロマール・ノワール
  評価点:65点  刊:富士見ドラゴンブック  著:藤澤さなえ/グループSNE(監修:清松みゆき)  絵:かわく
   Sword World RPGリプレイ集の最新作。どうでも良いけど、STREET FIGHTER 2シリーズじゃあるまいし、タイトルの文頭文末にゴテゴテと装飾言葉を入れるのはやめましょうよ……。普通に『Sword World RPGリプレイ 第七部』で良いじゃないですか(因みに、第一部第二部第三部があって、第四部が、風雲ミラルゴ編、第五部が、アンマント財宝編、第六部がへっぽこーずって言うノリ)。
 え〜〜、新キャラ5人と、新米GMとの二人三脚(六人七脚?)TRPG。シナリオ自体は、特筆に価しません。値するは、GMの拙さ。辛辣な台詞なんであまり言いたくは無いんですが、酷い。素人並みです。いや、これが個人のサイトとかで掲載されている素人リプレイなら良いんですが、仮にも商業誌。監修・清松氏は一体何を思ってこれに「GO」を出したのかが謎です。まぁ、勘繰れなくは無いですよ?「GM仕事は難しいもの。だが、初心者でも拙いなりにGM仕事はこなせます。そして、2回、3回とセッションをこなしていけば、慣れてくるもの次第に人並みなセッションをこなせるようになりますよ。だから、初心者だからと言って敬遠せずに、みんなどんどんGMプレイしましょう」と。それが言いたいのかもしれない。だけど、だけどさ……ルールを全く知らない、GMド素人以前にSword Worldド素人にマスターやらせるのはどうかと思うんだけど……。せめて、どっちかに精通していないと、本作みたいなヒドい展開になるんじゃないでしょうか?いや、だからと言って「じゃぁ貴様はまともなセッションをこなせるのか?!ゴルァ!」って聴かれると、思わず目を背けちゃいますけどね。だって、俺が昔GMやった時って、藤澤さんと大差無い――正直に言います、もっと酷かったです――セッションしかできませんでしたからね。けど、実際やるのと文句言うのは別問題です。だので、一先ず文句だけを言っておきます。
 で、内容。
 第一話「闇の街の盗賊たち」: 無理矢理巻き込まれ導入型シナリオ。俺も昔やりましたが、失敗するとプレイが滅茶苦茶です。こう言う導入、プレイヤーが納得できない巻き込まれ方だと、プレイヤーはムキになって、GMに歯向かうアクションばかり起こそうとしますから。まぁ、流石に商業誌でそこまで酷いプレイヤーはいなかったようですが、いきなりコレは不味いんでないですか?と思いました(←経験者:文句言われた事有り)。
 第二話「リッチで面倒な依頼者さま」: う〜〜ん。盗賊ギルドの使い方が下手クソだなぁ……。ギルド員もまともな交渉できてないし(まぁ、これは完全にGM本人の力量に任されてしまうので、実際のギルド員のレベルと同程度の交渉が、必ずできるとは限らないのですが)。何て言うのか、ギルドが完全に「便利アイテム」として利用されている。こんなんじゃ、ギルドは冒険者たちに食い潰されますよ?――あと、どこだったかで「今後も盗賊ギルドを使って導入をうんたらかんたら」言っていたような気がしますが、ヤメた方が良いと思う。巨大勢力をアイテム同然に使われて、プレイヤーが楽して終了するだけのシナリオになる可能性が高いし、何よりプレイヤー(と読者)が飽きるから。
 第三話「怪しいやらしい偽者たち」: 情報の与え方があからさま過ぎる……。第二話で捕らえた敵を尋問した結果をギルドから聴いてる時に、普通な情報の中に「毛深かった」って、わざわざ聴かない限りは与えられそうも無い情報を与えるのは、明らかに「何かありますよ」だろうに……。まぁ、プレイヤー達は単なるギャグとして受け取ったみたいだけど、もしかしたら「あからさま過ぎて警戒した」のでは?と邪推していまします。
 まぁ、概ねそんな感じ。後は、簡単なキャラクター紹介をば。
 クレスポ:女好き。生命力6点の蟻んこの如くキャラクター。敏捷度17は、パーティー最遅。新単位「クレスポ」は、生命点の単位です。
 ベルカナ:衣装が変型のセーラー服に見える魔術師の少女。実は意外に腹黒いか?
 マロウ:田舎から上京してきたハーフエルフ。「〜〜だべ」は訛りなのか?
 シャイアラ:我が儘エルフお姉様。一番プレイが玄人っぽい。
 ブック:グラスランナー。――シーフでは無くセージらしい。
 ……役立たずパーティーだな、こいつら……(笑)。

【新ソード・ワールドRPGリプレイ集NEXT3 コロシアム・プレミアム
  評価点:45点  刊:富士見ドラゴンブック  著:藤澤さなえ/グループSNE(監修:清松みゆき)  絵:かわく
   NEXT2『ダンジョン・パッション』の感想が無いのに3巻の感想。いや、2巻読み終えた当時は時間が取れてなかったんで、書かなかったんですが……。もう忘れているので、また読み返した時にでも追記します。
 で、感想ですが、まぁ、点数通り。何が駄目なんだろう?と自分なりに考えてみたのですが、どうもストーリーの基盤となるべきシナリオに面白みが無いのが問題かと思われる――本人が一生懸命なだけに、万が一にも藤澤さんの目に触れると忍びないのですが……――。具体的にどこがどうと語れる程GMとして達者なシナリオテラーであるワケでも無いのですが、「シナリオの流れに釈然としない部分が多い」事がまず第一にあり、そのせいかどうかは解かりませんが、「中弛みがして締まりが悪い」「シナリオの中核となる部分が解かり辛く、全容を見通せない」などに繋がっているのではないだろうか?と考えた次第です。
 しかし、そのシナリオの悪さをカバーするようにPC達が面白おかしくストーリーを進めてくれるので――時々「悪ノリ」している場面も見受けられますが――、どうにかこうにか見捨てずに読み続ける気にはなれます。
 前述した通り、藤澤さん自身は一生懸命ですし、自分の拙さもよく自覚しているようですので、そこらへんを踏まえてシナリオ作りのコツを掴んでいってくれれば(Sword Worldの世界観を理解する事、シナリオをどこまで作りこむべきなのかと言った匙加減、PCの予期せぬ行動に対する冷静な対処、など)、PCにおんぶ抱っこする事無く作品を盛り上げていけると思います。
 何やら生意気な事口走ってますが、何だかんだで期待はしているので、頑張って欲しいです。
PS:ベルカナ&シャイアラの入浴シーンは必見です。

【ソード・ワールドRPGリプレイ集Walts5 誓い・陰謀・巣立ちの日
  評価点:85点  刊:富士見ドラゴンブック  著:篠谷志乃/グループSNE(監修:清松みゆき)  絵:桐原いづみ
   Sword World TRPGリプレイ第八部。書評として紹介するのは初めてながらにして最終巻。書評の更新がここ4・5年くらい滞っていたので……。
 さて、起承転結の「起」「承」「転」を紹介していない次第ですが、大変満足できる作品でした。ただそれでもやはりダメ出しする事は可能なワケで、そのダメ出しポイントが「この作品がリプレイだった」って所なんですよね。物語の流れや、キャラクター達の心情の変化、環境の激変、色恋沙汰の渦中と収束。どれをとっても物凄く面白いんですが、これを「プレイヤーが演じている」と考えると、何て言うのか――萎える。勿論、真面目に一生懸命プレイして下さっていたであろうプレイヤーの皆様方には失礼なのは承知です。それでも、やっぱりなえちゃうんだからしょうがない。
 とは言いながら、何度も(?)言うように、物語自体はとても面白かった。キーナがディケイに寄せる恋心、アイルがブランシュを想う思慕の心、ナジカが皆を包む思慕の心。殺伐とした冒険者家業の中にあって、ほのぼのと家族愛(血の繋がりは無いですが)を綴るこの作品は、名作と呼ぶに相応しいと俺は思っています(でも実は、連載開始当初は、「こんなのSword Worldじゃねぇ」って否定してたんですけどね。本当に面白い作品ならば、既成概念なんて関係無いって事を思い知らされました)。
第十二.五話『細い糸』
 前回のクエストで不幸にも命を落としたディケイ。キーナが、ささいなスレ違いを謝ろうとしていたその矢先の出来事――本当に、ダイスの神様の悪戯みたいな展開でした。
 そんな中、この回には沢山の見所が満載でした。
見所1.ま・さ・か・の!!!サティア母さん再登場!!!ここで彼女を再登場させるなんて、なんてオールドファン泣かせな演出だ!!見直したゼ、篠谷GM!!あ、ちなみに、サティアさんについてはソード・ワールド西部諸国アドベンチャーを参照の事。
見所2.そしてまさかの再登場、マンティコアのライブリオン!!西部諸国は思い出の宝庫だなぁ……。
見所3.で、ライブリオンに啖呵切るブランシュ。ブランシュの言動に飽きてアイルに手を伸ばそうとするGMの演技(?)も見事だけど、それに対するブランシュの切り返しもまた見事!!読みながら、思わず「え?!」って驚愕してしまった。
第十三話『意地と信念』
 死んだディケイを生き返らせる方法としては、まぁ妥当な落とし所かな。西部諸国テン・チルドレン"蘇生リザレクション" できるような司祭もいないだろうし、その伝手も無いだろうし。ご都合主義的展開ではあるけども、まぁそこは空気を読んでスルーします。
第十四話『陰謀の陰』
 平原での追跡トレースクエスト。それよりも前半戦の赤面プレイの展開に萌えましょう。但し、「コレがリプレイだ」と意識しちゃいけませんよ?
第十五話『芽吹きの季節の訪れ』
 感動の最終回。ラスボス戦云々よりも、夜の湯浴みシーン(not お色気)でのキーナ&ブランシュ、ディケイ&アイルの遣り取りがこう、青春ブルー・スプリングです。後は、鷲頭馬ヒッポグリフでの滑空〜落下シーンでのディケイのヘタレっぷり。
 最後の最後でのブランシュとアイルの遣り取りは、「リプレイ」としてはとても蛇足だったと思う。だけど、「作品」としては絶対に必要だった。腕を掴み、ブランシュを引き止めるアイル。唇を奪い、ブランシュを惹き止めるアイル。連載開始当初は少し腹黒さも見えるショタ少年だったハズが、十五回ものクエストを通す中で、確かな「男」に成長したんだな、と感じました。


 多分、このリプレイ現場を目撃していたら、間違いなく「ウゼェ……」って呟いたと思います。だけど、純粋に作品として読み解けば、ほろ苦くも甘酸っぱい、青春たっぷりストロベリプレイを堪能できます。
 最後に。桐原いづみさんの巻末青春イラストに、最大の賛辞を送ります。

【シンフォニア グリーン】
  評価点:75点  刊:電撃文庫  著:砦葉月  絵:秋津たいら
   しんみりとした語りで進められる、植生の世界の物語。リィンが請け負ったプラントハンターとしての仕事を通して、人と植物との交流を描く。
 面白かったです。独特な雰囲気の描写が、主人公リィンと綺麗にリンクし、また、のめり込む世界観を創造している。全部で五話から成る短編集ですが、一話一話に過不足無いストーリー進行。一つ一つにこめられたメッセージが、読み手に確りと伝わる丁寧な書き込み。俺も小説家(を目指す卵)として見習わなければいけない所が一杯です。しかも、後書きを読まれれば解かるのですが、書き込まれたメッセージだけでは無く、一話一話で自分が何を書いていくべきか、その方向性に沿って正しく推し進める事も出来ており、本当の意味での「プロ」の小説書きさんだな、と思いました。
 全体的に「静か」な描写ですが、唯一第四話だけが「熱い」所がありましたね。そのせいかどうか解かりませんが、第四話だけがちょっと異色でした。
PS:秋津さんのイラストは俺の好みではありませんでしたが、世界観には非常にお似合いな絵柄です。

【新ロードス島戦記2 新生の魔帝国
  評価点:70点  刊:角川スニーカー文庫  著:水野良  絵:三樹本晴彦
   面白いッス。面白いんですケド、これだけを読んで良いものか?と思ってしまう。ロードス島戦記は「旧〜」の方でもそうだったんですけど、長い長い大河小説。それをただこの巻だけで評価すると言うのは、いささか間違えているような気がする。話が完結した後でないと、正しい評価が出来ないような気がする。てな理由もひっくるめた上で、少々辛口に評価して70点。
 長い前置きは毎度の事として、一巻に続いて前哨戦と言う感の否めない本作品、スパークが凛々しく成長していてなんか不満。リーフは設定上結構毒舌なハズなのに大人しくてちょっと不満。でも、ニースは良くも悪くもこちらの期待外れな性格付けが出てきていい感じ。
 今回は怪虫「砂走り」の生態がなかなか面白い形で明らかになっていて、そこも一つの見所だと思う。あと、ヴェイルとクラートの俗物じみた確執も今後の展開が楽しみ。他にも邪龍ナースの今後の動向や、新生マーモ帝国軍の少年皇帝レイエスの実力の程、イラストが妙に浮いてて笑えた辮髪の闇司祭オルフェスの存在など、展開と正体が気になる存在が散りばめられていて先が楽しみ。やっぱり、水野良はこのノリが一番似合っていると思う(水野良本人がそれを快く思うかどうかは別問題として)。
PS:やっぱりイラストレイターは出渕裕さんを希望。
PS:登場人物多くて覚え切れない。次巻までに半分くらい忘れているに100ダリク。

【新ロードス島戦記3 新生の魔帝国
  評価点:75点  刊:角川スニーカー文庫  著:水野良  絵:三樹本晴彦
   今回は普通に楽しめた。やっぱり、スパーク君ってば不幸ね。次から次へと災難続き。頑張れ、公王。
 感想。ヒロインの小ニースが好きになれない。はっきり言うと嫌い。何でだろう?聖女と言うわりにどこまでも人間臭くって、打算的なのが気に食わないのかな?違うような気もするが。まぁ、理由があろうが無かろうが気に食わない物は仕方が無い。
 んで、その代わりってわけでも無いんだけど、"公王の友人" ことハーフエルフのリーフ嬢が大好き。やっぱ、こう言う健気なオナゴはよろしげ。って、何煩悩ぶっこいてんでしょうね、俺。
 今回面白いと思ったのは、リーフ嬢の健気さともう一つ。ライデン盗賊ギルドのマスター・フォースの情報操作。とっても地味で気の遠くなるような作業だったけど、妙に納得できる現実感があって好きでした。
 さてさて、3巻ラストでまたしても困難を据え置きされたマーモ公国。公王スパークは一体どうやってしてこの危地を脱するのか?
PS:しっかし、よく考えると、主人公のスパークってば、一番出番が多い割に活躍してねェなァ。まァ、王が表立って活躍するような国も、それはそれで問題があるが。

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