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【ソード・ワールドRPGアドベンチャー 『ベルダイン熱狂!』『アルバトロス追撃!』『タイデル騒乱!』『プロミジー急転!』『ナイトブレイカーズ爆発!』
  評価点:90点  刊:富士見ドラゴンブック  著:山本弘/グループSNE  絵:田中久仁彦
   Sword Worldの全盛期に月刊雑誌DRAGON MAGAZINEにて収録されていた読者参加型インタラクティブ(双方向性)ノベル。企画第一段がこのアドベンチャー。どう双方向性かと言うと、登場人物、武器、魔法、モンスター、その他小道具から果てにはストーリーまで、その全てを読者から大々的に応募し、ちぐはぐな投稿アイディアを鬼才・山本弘が一つの作品として纏め上げる。ただ「読む」だけでは無く「参加」する事が出来る、当時画期的な作品。今でこそインターネットが普及してそう言った企画も比較的簡単に行なわれる世の中だが、当時は通信手段としてE-mailもまだまだ世に浸透しておらず(て言うか、パソコンどころかワープロも触った事無い人間が吐いて捨てる程いた時代だ)、その大半が郵政省任せ。その中でこう言った企画を行えたのは、ひとえにDRAGON MAGAZINE編集者及び山本弘の努力の賜物だと思う。
 全五巻。一巻から順に『ベルダイン熱狂!』『アルバトロス追撃!』『タイデル騒乱!』『プロミジー急転!』『ナイトブレイカーズ爆発!』。
 さて置き本題。主要登場人物は全部で六人。アレクラスト初のロックミュージシャンを目指すナイトブレイカーズのリーダーことリュクティ・アルバスノット(人間・男・25歳)。草原の国ミラルゴからやってきた露出度の極めて低いワイルドな女性レイハティア・アリアレート(人間・女・23歳)。レイハとは逆に露出度バンバン(笑)の金髪ねーちゃんシャディ・ビーン(人間・女・19歳)。んで、ストーリー初期は影が薄かった割りに最後では物語の中核にしっかりと座り込んでいた不幸な少年ティリー(人間・男・16歳?)。武闘家目指して日々是精進、音痴で元気なボーイッシュな少女イーシャ・レン・ギルガメッシュ(通称ボウイ:ハーフエルフ・女・17歳)。おさんどん姿が似合う子持ち人妻、「パーティーのおふくろさん」ことサティア・アディ(ハーフエルフ・女・39歳)。こうして見ると何気にサティアが最年長。ちょっとびっくり。しかもこのメインの六人さえ、実は読者応募のキャラクター達。そして第一話の「天の光はすべて星」のみが唯一山本弘のオリジナルで、あとは全て読者からの応募アイディアを元に構成されていく。
 まず、一人の発想力では無く、多くの発想力を持って作品創作にあたっているから、キャラクターは皆魅力的。ストーリーも捻りがある。エピソードは笑わされるし哀しく切ないし。アイテムは意外性や有用性に富む。呪文の詠唱も旋律美しい言葉の連なりで神秘的。そして何より、自らアイディア発起人として参加する事で、毎月毎月DRAGON MAGAZINEを購入するのが楽しみで、読みながらドキドキの連続だった。
 あの頃(1993年)は良かったなァ。俺も受験勉強そっちのけで投稿したりと見事にオタク街道一直線だった(笑)。現在のHN「九本麻有巣」も当時のPNをそのまま流用しての事。もしも今こう言った企画が立ち上がったら、今度は就職活動や修論研究(2001/05/23現在)もそっちのけになっちゃうんだろうなァ。……それも良いかも(←良くないって)。
 尚、一番のお気に入りアイディアは、黒騎士さんの「ティリーのフルネーム」だったりする。感動だニャ〜。
PS:個人的には「コモリアカマダラオオガエル」のチャーザちゃんにメイン張って欲しかった(笑:うっわ、マニアック……このキャラ知ってる人がいたら、是非とも掲示板で報告して欲しい)
_/_/_/_/ ベストキャラクターランキング _/_/_/_/
1. イーシャ・レン・ギルガメッシュ 通称:ボウイ
 メインのうちの一人。一人称がボクな赤髪のハーフエルフ。やっぱり、元気な小娘って良いね。と、オタクチックな発言。
   発案者名:水庭真琴さん
2. サティア・アディ
 同じくメインの一人。マジックアイテムが持てなかったりとちょっとしたスパイス設定もGOODね。でも、最後にマジックアイテムを手にする件はちょっと……。
   発案者名:高橋里仁さん
3. "流れる風"(人間・男・26歳)
 軍事国家ロドーリルで反戦歌を歌ってテン・チルドレンまで流れ付いた反戦フォークシンガー。重厚な重みが渋くて良かった。
   発案者名:黒騎士さん
4. ジェイド・コッカー(人間・男・40歳)
 ティリーの父親。設定自体は普通な人なのに、父親の本当の姿ってモンを見せ付けてくれる、素敵なお父さんでした。最高。
   発案者名:真実菜さん
5. ラディッシュ(人間・女・27歳)
 借金取り。高利貸しではない。結構イイ性格してたなァ。出番短かったけど。
   発案者名:樹懶さん
次点.「言葉の仲介者」ルーイン(ハーフエルフ・女・39歳)
 使い魔の猛犬ダークネス、リスに化けたプーカのカオス、軍馬エクスキューショーナーと共に旅する飛脚。サティアの幼馴染み。
   発案者名:九本麻有巣(爆)

【ソード・ワールドRPGリプレイ集 第一部 『盗賊たちの狂詩曲ラプソディ』『モンスターたちの交響曲シンフォニー』『終わりなき即興曲トッカータ
  評価点:70点  刊:富士見ドラゴンブック  著:山本弘/グループSNE  絵:草g琢仁・竜胆丈二・田口静子
   Sword Worldの黎明期に月刊雑誌DRAGON MAGAZINEにて収録されていたTRPGリプレイ集三冊。タイトルは『盗賊たちの狂詩曲ラプソディ』『モンスターたちの交響曲シンフォニー』『終わりなき即興曲トッカータ』。
 まず初めに、「リプレイとは?」から。リプレイとは、直訳すると「再演する」。これはGM(ゲームマスター)と呼ばれる一人(場合によっては複数)のストーリーテラーと、プレイヤーと呼ばれる複数のストーリーメイカーで行なわれる、無限の選択肢を持つ多人数テーブルゲームTRPGTable-talk Role Playing Game)の舞台を、まるで映画の台本でも作るかのように文字にしたもの(TRPGについてもっと知りたい人は、インターネットで調べて下さい)。
 で、この三冊はそのリプレイ集の第一部作。山本弘をGMに据え、6人の冒険者たち(通称「スチャラカ冒険隊」)が繰り広げる冒険を描いてます。
 見所はやはりリプレイ集2に収録されているモンスターたちの交響曲シンフォニーでしょう。ハーフ・エルフのアリシアンのプレイヤーさん、ファリス神官の横暴とも言える行動に、マジで怒ってたらしいですよ。でもまァ、確かに「モンスターだから」と殺して回ってそれが正しいと認識されるのは、変な話である。そして、それをモチーフに選んでマスタリングできる山本弘はやはり凄いと思う。
 次はパーティー最年長、精神年齢最年少のエルフのケイン君。最後のシナリオで里帰りを果たした直後、親父さんに「スネア」を掛ける所が非常に好きだったなァ……。
 他のキャラクター達も素敵だった。密かに一番まともだったサボさんは男でファイターなクセになぜかリボンしてるし。吟遊詩人とシーフを目指していたはずのユズは知らぬ間にファイターに転向してるし。「お嬢さま」ことケッチャはソーサラーのクセに知力がパーティー最低だし。ドワーフファイターのディーボは、妙に燻し銀だったし。
 ま、TRPGの一つの側面を面白おかしく見せてくれる、素晴らしい作品でしたよ、これは。

【ソード・ワールドRPGリプレイ集 第二部 『魔境の支配者』『南海の勝利者』
  評価点:55点  刊:富士見ドラゴンブック  著:山本弘/グループSNE  絵:幡池裕行・竜胆丈二
   Sword World TRPGリプレイ集第二部。タイトルは4巻が「魔境の支配者」、5巻「南海の勝利者」。
 第一部とは打って変わってシリアス路線。ソーサラーのキドマンは第三話「密林の追跡者」で虎さんに噛み殺される。チャ=ザ神のプリーストにしてシーフ、「銀の雨の」リンも第四話で御逝去された(しかもラスボスの仮面の魔術師戦に突入する直前:哀)。まァ人が死にゃァシリアスってワケでは無いですが。「笑い」を期待していた分、ちょっとね……。あと、キャラクターにも「濃さ」が足りなかった。だからかな?あまりお話が盛り上がらずに終わった感があってね。ちょっと残念。
 それでも、それなりに楽しめました。

【ソード・ワールドRPGリプレイ集 第三部 『2万ガメルを取り返せ!』『混沌魔術師の挑戦』『亡者の村に潜む闇』『バブリーズ・フォーエバー』
  評価点:85点  刊:富士見ドラゴンブック  著:清松みゆき/グループSNE  絵:中村博文・竜胆丈二
   Sword World TRPGリプレイ集第三部。タイトル列挙、6巻「2万ガメルを取り返せ!」、7巻「混沌魔術師の挑戦」、8巻「亡者の村に潜む闇」、9巻「バブリーズ・フォーエバー」。
 第二部とは打って変わって兎に角プレイヤー陣が濃い事濃い事。一人一人のキャラクターがこれだけ色濃く出てくれるのは、やっぱりプレイヤー一人一人の性格がそのままキャラクターに反映されているからだろう。
 キャラクターは当初貧乏路線まっしぐらだったが、GMの清松みゆきの手違いで、使い切れ無い程の財産を手に入れる。あとは金にあかせた御大尽攻撃で並み居る強豪をバッタバッタと薙ぎ倒し、いつしか彼らは「バブリー・アドベンチャラー」と呼ばれるに到る……。
 書評用に読み返した(2001/05/20)。面白かった。笑えた。一番の見所は、やっぱり丸耳エルフのスイフリーだろう。彼がこのリプレイに参加してくれた事が、このリプレイを二倍にも三倍にも笑わせる要素となっているに違いない。その中でも特に第11話「冒険者たち、海へ」のサブタイトル『軍師スイフリー、痛恨のトイレ休憩』の見出しは暫らく笑わせてもらいました。
 最近、月刊DRAGON MAGAZINEでもSword World TRPGリプレイが連載されたが、まず初めにこちらを読もう!!Sword Worldにハマる事間違い無し!!
 尚、Sword World TRPGリプレイでは一番面白いとそこかしこで言われている。
_/_/_/_/ キャラクター紹介 &: 名台詞 _/_/_/_/
●アーチボルト・アーウィン・ウィムジィ 通称:アーチー(人間・男)
 セージの家に生まれながら落ち零れ、ファイターに身を窶したパーティーリーダー。亜人種族が嫌いらしい。駆け出しの時分にはホブ・ゴブリンを好敵手として認めていたのに、シナリオが進むごとに成長して行った。最終的には魔剣アーチブレイドを手に並み居る敵をズンバラリン、しまいにゃファイターレベルも8まで上がり、知らぬ間にアノスの騎士の称号を得て、「キャッスル・わらしべ」なる城まで手に入れる(っつっても、これはパーティーの共有物だが)。
「ホブゴブリンに当てられた。やはりゴブリンを上回るだけはある。やるな」
  (第3話「穴の中の懲りない面々」より)
●フィリス(人間・女)
 ソーサラー家系の放蕩娘。故郷オランに帰っても親父さんに会いたくないが為に冒険者の店で宿を取ったりと父親を泣かせる。玉の輿を狙ってアーチーに近付くが、アーチーからのアプローチはゼロ。どころか普段から名前で呼ばれていないから「やあフィリス……だっけ?」と呼ばれる始末(笑:第5話「結婚するって本当ですか?」より)。頑張れフィリス、負けるなフィリス。最後の最後でアーチーを見捨ててしまうアンタは素敵だ(笑)。
「まあまあ。結婚したら連絡するから」
父親(GM)「結婚する前に知らせろー!」
  (第12話「陰謀の予兆」より)
●グイズノー(人間・男)
 知識の神ラーダに仕えるプリースト。のハズだが、どう見ても商売の神チャ=ザの神官にしか見えない。破戒坊主が全開に発揮され、いつ神に見放されても不思議ではないだろう。第1話でエネルギー・ボルトの一撃を食らいその命を枯らしてしまうが、次の回ではきちんとリザレクションを掛けてもらい無事生還。が、本来80000ガメル掛かるはずの費用が何故か(理由:GMの暗算ミス)相場の1/108000ガメルで復活。その後、彼は「8000ガメルの男」として生きる(噂:財務担当の一人は、その責を受けて「混沌の島」に左遷されたそうな……)。
「どうせお金は売るほどあるんですから」
  (第12話「陰謀の予兆」より)
●レジィナ(人間・女)
 パーティーの良心。彼女がいなかったら、恐らくこのパーティーは外道路線まっしぐらだっただろう。そのせいか、一番キャラクターが曖昧だった感がある。が、プレイ中は一番感情を表に出しているようで、彼女なりの魅力を爆発させていた。サーカス一座の一人娘のリズを可愛がり、人情では動かないパーティーの重い腰を浮かしてあげたり、オイシイ所をかっさらったり。「生き生き」していた。
「しばきに行きませんか?しばいたほうがいいと思いませんか?だからしばき倒しに行きましょう」
  (第13話「魔術師なんて怖くない」より)
●パラサ=ピルペ=パン(グラスランナー・男)
 「にゅう」の語尾で一世を風靡した(注:一部地域限定)グラスランナー。手先が器用で素早くて、敵に回すと兎に角厄介。飽金の時代が訪れる頃にはコモン・ルーンを買いあさり、すっかりパーティー随一の「アイテム」として出来上がっていた。何故か漫才の相方役をになっており、スイフリーとの妖精コンビ、アーチーとの仲たがいコンビ、グイズノーとの悪態コンビと、中々面白い役に落ち付いていた。ファリス神官の金髪姐ちゃん、クレアさんにメロメロ(死語)。
グイズノー「そのあたりの人間の機微がわからぬとは、所詮グラスランナー、ただのアイテムよのう」
「オマエみたいな、描きやすい顔の人間に言われとうないわい」
  (第7話「虎と少女とサーカス団」より)
●スイフリー(エルフ・男)
 「パーティーのブレイン」と呼ばれ「あの肌は白粉おしろいだ」とも「あの耳は付け耳だ」とも呼ばれた極悪エルフ。人間社会を見学に来たエルフと言う設定だったが、すっかり染め上げられる。報酬の上前はねるは捉えたダーク・エルフに対して「精神力ボーナス+4」の方法を聞こうとするは、アーチーの見合い話にゃ茶々を入れるは、ファリス神官のクレア=バーンロードの出世の道を断ち切るは、海の邪神ミルリーフを演じるは、よりにもよって敵のダーク・エルフを油断させる為の一言が「味方だ」だし。兎に角プレイ態度が中々邪悪で笑わせられる。しかし、彼にも苦手は事が一つだけある。それが「子供をあやす事」だ。
「甘いな、はとこの子よ。不正と言うのは取り締まっても金にはならない。見逃してこそ、お金になるのだよ。良い子のみんな?わかってくれたかな?」
  (第10話「悪党になりたい!?」より。尚、彼には二桁に達する名台詞が残されています。皆で読み漁りましょう)

【ソード・ワールドRPGリプレイ集 風雲ミラルゴ編 『アサシンをやりこめろ!』『アドベンチャラーに任せとけ!』
  評価点:10点  刊:富士見ドラゴンブック  著:清松みゆき/グループSNE  絵:ぴぃたぁそると・竜胆丈二
   Sword World TRPGリプレイ第四部。一巻「アサシンをやりこめろ!」。二巻「アドベンチャラーに任せとけ!」。
 は〜い。つまらなかったです。まず第一に、ぴぃたぁそるとのイラストが大いに気に入らなかった。その時点で読む気を大いに削ぎ落とされ、そして、どうしたGM清松みゆき?!
 キャラクター。基礎設定は皆さんイイ感じでイロモノ揃いだったのに、リプレイを読んでみると「駄目だコリャ」。設定が生きてきてないんですよねェ。まァ、普通の「小説」とは違う分、個性を出すのが難しいのは解かりますが。
 内容は、プレイヤー六人とミラルゴのアサシンとの抗争――だと思ったケド……読み返す気にもなれずにウロ覚えで申し訳無い(2001/05/22)――。が、『四大元素部隊』はリプレイの設定としてはあまりにイタかった……(「小説」の設定として出したらば、あるいはそれ程でもなかったかもね……)。第三部の設定を組み込みたいと思う気持ちもよく解かるし、俺的にも大いに願い祈った事だったけど、実際にそれをやられたらイタいんだよ、これがまた……。しかも、絡みが中途半端過ぎてこうモヤモヤとしたイヤさが胸にわだかまって気持ち悪い。絡めるんだったら徹底的に絡め上げて、絡めないんだったらハナから絡めないで欲しかった。
 Sword World TRPGリプレイをこれから読んだ人。忘れなさい。俺が言いたいのは以上です。

【ソード・ワールドRPGリプレイ集 アンマント財宝編 『宝の地図に勇者が集う』『大迷宮に勇者が挑む』
  評価点:40点  刊:富士見ドラゴンブック  著:清松みゆき/グループSNE  絵:伊東勢・竜胆丈二
   Sword World TRPGリプレイ第五部。一巻「宝の地図に勇者が集う」。二巻「大迷宮に勇者が挑む」。
 う〜む。まだまだ。それでも第四部に比べればなんぼかマシ。キャラクターは第四部の内の三人が引継ぎで出場、新キャラ三人の毎度お馴染みメンバー数6。は、まァ良いとして、キャラクターはそこそこ面白く、シナリオも悪くは無かった。が、全体を通すとちょっと弱い感があったのは否めなく、良かった点が悪かった点をカバーし切れてなかったせいで俺の採点は辛口。
 面白かった場面とか列挙しようと思ったけど、列挙したら面白くも何とも無かったのでパス。物語の流れの中でその場面に出会わなければ面白くありませんでしたので……。気が向いた方は御自身で手に取って見て下さい(店に並んでいたらね)。

【ソード・ワールドRPGリプレイ集xS 猫の手お気楽娘、幻惑?
  評価点:40点  刊:富士見ドラゴンブック  著:清松みゆき/グループSNE  絵:牛木義隆・小林裕也
   Sword World TRPGリプレイ第八部。
 う〜〜〜ん。実は、3巻を読むまで、このシリーズのGMが清松氏だとは気付かなかった。まぁ、今まだ誰がGMとか気にしなかったから気付いてなかったんだけどね。気付いてみれば、確かにマスタリング巧者な進め方は見事な手腕だし、ウィンド奪還で手を抜かなかったマスタリング(ストーリーの都合で、無理矢理ウィンドを逃がしたりしないやり方)は第三部瞬間移動の門テレポート・ゲート破壊を諦めた姿勢と同じだし、秘密結社『ゼム』の仕立て方が風雲ミラルゴ編に通じるものがありましたね。思わず納得。
【第七話】愛しの君・出現 ウィンド兄さん早速奪還(笑)。もっと引っ張られるかなぁと思いきや、そんな事無いんですね。ちょっと笑った。そして、新キャラ・女盗賊マーブル。便利なアイテムをGETかと思いきや、まさかああなるとは……。冷静に考えれば確かにその通りなんですけど、多分俺がマスタリングしてたら、あの行動を取らす事は出来なかったと思う。
【第八話】主人公(仮)・帰還 奪還したウィンドに掛けられた呪い解呪を求めてえ〜〜んやこ〜〜ら♪ ラスボスデーモンのクラカボリグが使う「カース・オブ・カウント」は面白い能力だなと思った。あまり大した効果は起こらなかったから残念だけど、トリムやモニカ当たりが影響表「6」を振ったらどうなるか――想像すると身悶えする程萌えますよ(笑)。後、知力のポーションがGETできなかったユーリリアの挿絵が可愛いです。
【第九話】あの娘探して ハイロード・ポイントを自ら上乗せするウィンドはマゾだと思います。後、ハイロード・ポイントのボーナスは即興なんですかね?
 さて。今回の見所は、ウィンド兄さんをいじめ倒すユーリリアのサドっぷりと、そのユーリリアに良いようにされるがままなウィンド兄さんのヘタレっぷりでしょうね。頑張れウィンド、将来きっと、何か良い事あるさ!!

【ソード・ワールド短編集 許されし偽り
  評価点:70点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:北沢慶・高井信・小川楽喜・清松みゆき(編集:安田均)  絵:戸部淑
   ソード・アンド・ソーサリーの世界フォーセリア。その大陸アレクラストを舞台に繰り広げられる活劇を四本纏めた短編集。作品は「許されし偽り(北沢慶)」「狙われた相続人(高井信)」「日だまりの絵画(小川楽喜)」「赤い鎧III 不自然な死(清松みゆき)」。こう言う世界観って、俺の小説漬けのルーツなだけに、やっぱりやめられませんね(笑)。
1.許されし偽り:北沢 慶
 まァよくある怪物退治を発端に、そこから発展する暗黒神神官との戦い。普通に読める程度の作品で、つまらなくは無かったです。どこかに秀でている所があるわけでもなかったし。敢えて言わせてもらえば、インプのルファの存在が「人の持つ善悪への先入観」に大きく関わる所が、今後気になるところと言った所だろう。ただね、インプが人間の少女の顔を持っているってのが……いや、何やらワケありそうだったのでそれは別に良いんですよ。でも、「インプは醜悪な容姿を持つ下級の妖魔である」と言う常識がある中で、一般の村人達がルファを一目で「インプだ」と看破できるのは無理だと思う。多くの例外を目撃した目の肥えた冒険者ならいざ知らず、ね。
2.狙われた相続人:高井 信
 知る人は知る、ドワーフ探偵デュダとその助手エルフのリューク。二人を主人公にしたドタバタ探偵ストーリー。正直デュダシリーズはあまり好きくないのだけど、これは結構普通に読めた。謎も無駄にこねくりまわしているわけでもなく、簡潔に纏められている。しかも、事務所から一歩も外に出ず事件を解決する安楽椅子探偵(だったっけ?)。不満は、主人公がデュダだって事。だって、デュダって、「なにやら事件を無駄にややこしくして棚から牡丹餅的に事件を解決する」スタイルのダメ探偵なはずなのに、なんであんなに普通に探偵家業こなす事が出来るんだ?つまり、主人公がデュダじゃないだけで、随分と作品に対する印象が変わったって事。
3.日だまりの絵画:小川 楽喜
 これは面白かった。謎とかが複雑なわけでも派手なアクションがあるわけでも無いけど、ちょっとしんみりと来るものがあった。主人公のナルクの失恋が、あまりに可哀想で「悲劇」と言うよりも「喜劇」だった。うん、ナイクは馬に蹴られて信でしまっても仕方が無いだろう。
4.赤い鎧III 不自然な死:清松 みゆき
 面白かったんですけどね。ちょっと謎が捏ねくり過ぎている感があった。んで、語りがグラスランナーのランプなもんで、どうしてもストーリー全体が軽い印象を受けてしまう。それに、赤い鎧は今回数行だけしか出番無かったし。でも、ポール・ギューセルバーンのおじさんが、中々イヤミな性格していてかなり好きでした。
 全体として、期待通り――しかし、期待以上ではなかった――の出来映えでした。
PS:テーマは「異種族」らしいけど、殆どそれが気にならなかったのが逆に気になる。

【ソード・ワールド短編集 集え!へっぽこ冒険者たち
  評価点:60点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:江川晃・秋田みやび・北沢慶・西奥隆起・清松みゆき(編集:安田均)  絵:浜田よしかづ
   久し振りに出ました短編集!今回のお話は新ソード・ワールドRPGリプレイ集のキャラクター達に焦点を当てた短編集全5本立て!では、一本ずつ見ていきましょう。
1.神官戦士の憂鬱:江川 晃
 大地の妖精ドワーフのマイリー神官、「おやっさん」ことガルガドを中心に据えたお話。新米冒険者をまがりなりにも魔族を倒せし者デーモン・スレイヤーになるまで見守り続け、「自分はこの先どうするべきなのだろう?」と悩み始めたガルガトの心の内を見せて、そして魅せてくれました。最後の最後、ガルガドの叱咤の言葉は胸に染みました。
「教えたはずだろう、ジゼル。勝負を途中であきらめるのは、敵に背を向けるのと同じ。戦神の神官なら、最後の瞬間まで敵に立ち向かえ!」
 ここでの『敵』とは、「達成感を得たと言う誘惑」に負ける自分自身。最後まで、そして最期まで、人は自分の目標を見失ってはいけないんだな。
 ところで、「悪魔殺し」の異名は、そんなに嬉しいか?まぁ確かに偉業なんだけどさ、物凄く物々しくって、俺ならそんな名前で呼んで欲しくないな……。
2.幸せにいたる道:秋田 みやび
 赤貧森の妖精の混血児ハーフ・エルフマウナ・ガジュマのお話。う〜ん、今ひとつパンチが弱いなァ(←自分の事を棚に上げる〜〜)。でもまぁ、最後の何気ない「おかえり」のお陰で、なんとか及第点かな。え?偉そうだって?煩い。
3.グレートソードは筋肉娘の夢を見るか:北沢 慶
 お話の視点は、ファリスの神官戦士、人間種族準究極の筋力(=24)を誇る重戦車娘イリーナ・フォウリー。が手に入れた必要筋力24の最凶大剣グレート・ソード
 目の宛所は良かれ悪しかれ悪くは無いです――まぁ、世界観から完全に外れているから、正直好みではなかったけど――。ですが、如何せんお話自体が二流だったから。目の宛所が突飛だっただけに、物語が二流だとなんとも貧相な結果。
4.ノリスは踊る:西奥 隆起
 人間の盗賊シーフノリスのお話。な〜んか、展開が生ッチョロい。それ程悪いお話でははないんですが、キティの立場が何とも曖昧で、女の気紛れにしたって腑に落ちない。もう少し筋を通した理由で遊んで欲しかった。あと、中途半端なコメディタッチも読み味を悪くしてますね。
5.ゆく人くる人:清松みゆき
 BGMは「いい日旅立ち(山口 百恵)」。リプレイの最後で死んだノリスが蘇生リザレクションで生き返った後のお話。いやはや、流石は大御所。面白いです。最後の最後までパーティーのお荷物になってしまったノリスの悲しみが、彼の一挙手一投足に隈なく反映され、身に抓まされる悲しさを誘います。最後に走り去ってしまうノリスの後姿の哀愁が、文字だけからハッキリと想像されました。そして、そんな「出来の悪い息子」を探す旅に発つガルガドの「侠」、それを寂しいながらも見送るヒースの「潔さ」。そう言った一つ一つの情景に、人としての優しさが満ち溢れていて……。
 全体としての評価は少々辛口ですが、1・5の為だけに買っても損はありませんぜ、旦那。

【ソード・ワールド短編集 冒険の夜に翔べ!
  評価点:55点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:秋田みやび・川人忠明・小川楽喜・友野詳(編集:安田均)  絵:浜田よしかづ
   各話オリジナルの短編集。全体的に「う〜〜ん。もう一味欲しかったかなァ」感を否めませんでした。深みが足りない、と言うんでしょうかねェ?それでは、それぞれの感想をば。
1.季節の巡るたびごとに:秋田 みやび
 この巻では一番面白かったと思う。仲間を失った駆け出し冒険者の苦悩と、それに取って代わるようにパーティーインした新しい仲間。昔のような『英雄候補』としての冒険者ではなく、殆どの『冒険者』がそうである現実(いや、Sword World自体が既に現実じゃないんですが……)。それを描いた作品。
 ダドリーがサイレンスに執着する感情が、イマイチだった。理由は恐らく、サイレンスという人間が何者なのか、それを読者が全く解からなかったからだと思う。物語の冒頭で、中弛みしない程度にサイレンスと言う人間を書き込んでくれていれば、もっとダドリーの感情を読み取れたのでは無いか?と思う。残念。
 でも、シェレアがダドリーに辛辣な本音を告げた場面は良かったと思う。
2.我ら <不屈のものたち>!:川人 忠明
 ラジャンは幸せ者だと思う。だって、初めて訪れた冒険者の店で、あんな良い人達と出会えたんだから。
 冒険者志願の若者が、若く青い故に持つ理想を楯に、玄人冒険者達を奮い立たせる話。まぁ、よくあるストーリーの焼き増し、みたいな感じかな。ストーリー展開には捻りも何も無かったんで、ん〜〜、消化不良。
3.廃都に埋もれし孤影:小川 楽喜
 ソードワールドの物語としては、若干違うような気がする。
 肉体を完全にルクヴァードに乗っ取られた冒険者スィアス。物語の要は、そのスィアスが最後の最後で自分の胸を貫き、ルクヴァードともども死滅する所なんですが、そこが納得できない。これが仮に「つい10分前に肉体を乗っ取られ、意識が残っている状態でルクヴァード諸共に自害を果たした」ならば、まぁ物語に騙されても良いとは思う。しかし、スィアスが肉体を乗っ取られてからは既に長い年月が流れ、スィアスの自我は残っていない。そんな状態でスィアスの意識が復活し、肉体の支配を取り戻したと言うくだりがどうにも納得できない。そんな塩梅でした。
4.冒険の夜に飛べ!:友野 詳
 冒険者に憧れる盗賊シーフの少年クロフが、初めて挑戦する(?)市街冒険シティ・アドベンチャー。その中で熟練の冒険者たちの姿を目の当たりにして、ほんの少しだけ成長する姿を描く。
 最後の最後は、ソードワールドらしい決着の付け方だな、と思った。実力の差を、ちょっとした機転――それこそ、誰でも考えられそうなどうと言う事の無い機転だ――を利かせて埋め、目前の敵を仕留める。ソードワールド(特に短編集)って、小さな冒険譚の多くは、取り立ててどうだと言う事の無い小さな工夫を凝らせて依頼を成し遂げるような、そんな物語のお話だと思うので、こう言ったお話を読むと懐かしく思います。
 まぁ、全体的に「あとちょっと!」感を否めない感でした。残念。

【ソード・ワールド短編集 踊れ!へっぽこ大祭典
  評価点:75点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:清松みゆき・柘植めぐみ・北沢慶・篠谷志乃・秋田みやび(編集:安田均)  絵:浜田よしかづ
   うん、久し振りに面白かった。まぁ端的に言うと先ずはそんな感じでした。
 イリーナ・フォウリー/ヒースクリフ・セイバーヘーゲン/マウナ・ガジュマ/エキュー/バスから成るSword Worldリプレイの面々のサイドストーリー集。『10%テンパーセントの偽情報――バスの遍歴(清松みゆき)』『恋人はさんざん苦労す――エキューの事情(柘植めぐみ)』『ファリス様がみてる!?――ヒースの思い出(北沢慶)』『シャーマン・イン・ザ・ダーク――マウナの真実(篠谷志乃)』『友という名のもとに――イリーナの涙(秋田みやび)』の全5本立てと言う豪華な一冊です。
1.10%テンパーセントの偽情報――バスの遍歴:清松 みゆき
 先ずは大御所清松みゆき氏。バスが盗賊シーフを辞めて吟遊詩人バードとして生きる事となった顛末を語っている。ストーリー自体は10段階評価で4。面白いのボーダーラインにはいますが、それ程の作品ではありませんでしたね。マズルとベックがバスを恨む件が印象に残らない程稚拙で――「恨んでいる理由が稚拙でダメ」では無く「恨んでいる理由の見せ方が稚拙でダメ」です、念の為――、どうにも物語がしっくりと来なかった。
 でも、最後の最後でバスが言い含めた「10%テンパーセントの偽情報」の使い方は巧いな、と思ったので及第点。
2.恋人はさんざん苦労す――エキューの事情:柘植 めぐみ
 エキューのご両親登場。物語の機軸が一体何だったのかが解からなくて面白くなかったですね。結局この話では何が言いたかった or したかったのだろうか?ドタバタ喜劇を描きたかった、ってワケでも無さそうだし、う〜〜ん……。あと、P.117"剣折りソードブレイカーのオズ" "千の剣サウザンドソードのドビィ" の剣を折るシーンの挿絵が載ってありましたが……。いや、木剣じゃあるまいし、あんな折れ方しないだろう……。まぁ、単に「折れている事を読者に見せる為の手法」なのかもしれませんが。
3.ファリス様がみてる!?――ヒースの思い出:北沢慶
 ヒースが実はファリス信者だって知ってました?俺は知りませんでした。
 ヒースの若かりし日の甘酸っぱい(?)思い出。ストーリーそのものよりも、最後のオチが笑えた。頑張れヒース。いつか春はやって来るさ。
 で、クリス(許されし偽りの表題作に登場したキャラクター)がイリーナの兄だと正式に発表されましたね。まぁ、如何でも良いですが。
 あと、軽く重箱の隅突付きツッコミ。イリーナが重たい鎧着込んでいる所ですが、確かに筋力的な面では問題無いかもしれないけど、サイズが明らかに違う為動けないと思うのだけど……。ま、如何でも良いですけどね。
4.シャーマン・イン・ザ・ダーク――マウナの真実:篠谷 志乃
 我らがアイドルマウナ・ガジュマが主人公です。嫉妬の指輪ジェラシーリングの使い方が巧いなと思った。単に「日常会話が通用しない」だけでは無く「精霊魔法サイレント・スピリットが使えない」に繋げるとは……。それと、エピローグ直前でマウナが心の刻んだ言葉。
   ――積み重ねてきた時間を忘れていた。
   ――積み重ねてきた信頼を忘れていた。
 そう。マウナには大切な「家族」がいるんだから、つまらない事に拘り続ける事なんて無いんだ。――ってワケでして、エキュー。君の恋は実りません(笑)。
5.友という名のもとに――イリーナの涙:秋田 みやび
 この巻で一番面白かった。イリーナの真っ直ぐすぎる心にてられて、自分の心の闇に捕らわれてしまったアネット。イリーナとアネットの二人の小さな小さな友情に、ほんのりと心温まります。
 まぁ、個人的には物語の機軸とも言える二人の友情よりも、ヒースの一言が大変気持ち良く、心に残りましたけどね。
   「俺も、その……よく眠れるように、"眠りの雲スリープ・クラウド" をと」
 こう言う不器用な所、大好きだな。
 まぁ、今巻の見所は、概ねヒースです。では、このへんで。

【ソード・ワールド短編集 狙われたヘッポコーズ
  評価点:65点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:藤澤さなえ・秋口ぎぐる・秋田みやび・篠谷志乃(編集:安田均)  絵:安曇雪伸・くさなぎいずも・かわく・浜田よしかづ
   最近、ソード・ワールドは新リプレイのキャラクターにおんぶだっこな商業展開をしていて、実は少々ご不満だったりもします。まぁ、それでもそれなりには面白いので、取り敢えずは赦しておきます(←偉そう)。
1.愛があれば大丈夫――神官を導く(藤澤 さなえ/安曇 雪伸)
 大地母神マーファの見習神官にして大地の妖精ドワーフの少女・ニニと、同じく大地母神マーファの見習神官である人間の少年セギーのお話。良いお話ではあったんですが、残念なのはイラスト。いや、安曇氏のイラストが下手だとか、ンな大それた事ぁ言いません、寧ろ上手いと思います。じゃぁ何が不満だったかというと、ニニがドワーフっぽくなかった。どっちかと言うとハーフエルフか、もしくは大柄なグラスランナーっぽかった。絵の上手い下手よりも、もっとこう世界観を忠実に再現して欲しいと思うのは俺の我が儘でしょうか?――そして、内容には触れぬまま。いや、面白かったんですが、「では、特に何処が?」と問われると、何気に迷ってしまいましてねぇ……。敢えて挙げるなら、ニニが神の啓示を受ける瞬間でしょうか?
2.ギルドの掟――盗賊を縛る(秋口 ぎぐる/くさなぎ いずも)
 う〜〜ん。微妙。物語の展開も特に特筆する程のものでも無いし、キャラクター性も何がどうと言う程でもないし。そして何より、結局このお話の論点がよく解からなかった。いや、解説からの言葉を借りれば「ソードワールドにおける盗賊とは?」と語りたいのだと解かるのだけど、少なくてもこの話からは「ソードワールドの盗賊」は伝わって来なかった。まぁ、それでも褒め所として、ラストの三人の別れのシーンを挙げてはおきたいと思います。
3.ひとひらの歴史――魔術師を誘う(秋田 みやび/かわく)
 短編集『冒険の夜に翔べ!』収録作「季節の巡るたびごとに」の前編に当たる作品。シェレアが冒険者としての生活を送る以前のお話。性格悪の先輩・アルミンに騙されて獣化病ライカンスロープの研究に手を貸してしまい、そのせいで親友のパオラを危険の渦中に巻き込んでしまったシェレア。彼女の動揺する姿が何気にLovelyで嗜虐心をそそります(笑)。
 まぁ、その事件が原因で、魔術師ギルドを放逐される事になるのですが……個人的には、最後の書物に「享年」が入っていた方がシュールで面白かったと思う。
4.狙われたヘッポコーズ――冒険者を脅かす(篠谷 志乃/浜田 よしかづ)
 イリーナに無理矢理動屍薬ゾンビ・メイカーを飲ませる挿絵(P.297)はエロいと思います。
 イリーナ・マウナ・エキューの三人がゾンビ・メイカーで操られて、ヒース&バスと喧嘩する話。性格悪な魔術師・フェスが、ヒースの邪魔するために、一人ずつ順番に抗魔カウンター・マジックを掛けていく姿が面白い。単に「有効な戦術」として魔術を使うのでは無く、「嫌がらせ」として使うのって、面白くないですか?
 今回のお話は、『目指せ!奇跡の大団円』で「金目の猫」から奪還した商品=幻獣などの稀少生物に含まれていた一角獣ユニコーン関連のエピソード。
 イリーナ達としては、密猟者を退治する、言わば「勧善懲悪」な行為だったはずが、その裏では、愛する息子の病を治すためにどうしても一角獣ユニコーンの角を必要とする母親・メラリアの姿があった。しかし、皆様知っての通り、一角獣ユニコーンはイリーナ達の手によって保護され、結果として一角獣ユニコーンの角がメラリアの手元に届く事は無かった。
 冒険者が良かれと思って達成したミッションの裏で、このような悲劇が起こっているとは、誰も考えてなかったのでは無いか?勿論、イリーナ達も寝耳に水だっただろう。冒険者とは如何に因果な商売か。それを良く現した、良作だと思います。
 この短編集のモチーフは「職業」。1〜3は「職業」について語られた、と言うよりも、単にモチーフとした「職業」を使った物語を構成しているに対して、4だけはモチーフにした「職業」が一体どんな物なのかを語り掛ける。そんな出来栄えだったと思います。

【ソード・ワールド短編集 ぺらぺらーず漫遊記
  評価点:45点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:北沢慶・藤澤さなえ・清松みゆき(編集:安田均)  絵:かわく
   新リプレイNEXTのキャラクター5人のそれぞれの逸話を集めた短編集。そこそこ楽しめる作品群でした
1.クリティカル・クリミナル(北沢 慶) メインキャラクター:クレスポ/ベルカナ・ライザナーザ
 ん〜〜。「事件発生」→「巻き込まれる」→「事件解決」→「後日譚」が淡々と語られているだけで、この作品が最終的に何を訴えたかったのかを読み取る事はできませんでした(飽く迄も、文責者=九本麻 有巣は、です)。巻き込まれた事件に意外性も無く、事件解決までにドキドキハラハラも無く、登場人物に魅力があるワケでも無く。もっとストーリーに「アクセント」となるモノが欲しかったですね。ああ、でも、「クレスポが頭の回転が速いんだよ」ってのを読み知らせたかったのなら、それは少しだけ成功しているかも、です。
2.グルービー・ベイビー(藤澤 さなえ) メインキャラクター:ブック/シャイアラ
 ブックとシャイアラが、他の3人に何の相談も無く勝手に依頼を受けて、勝手に苦労する話。と投げ遣りに書くとつまらなそうですけど、こちらはそれなりに面白かったです。シャイアラの素直になれない子供っぽさとか、自分が仲間をどう思っているかを再確認するくだりとか。最後のシャイアラとブックの遣り取りにある、
    シャイアラ「しばらくは、仕事をもらった時は、あの三人に相談することにしない?」
 から
    ブック「ボクは構いませんよ。一緒にいる、姐さんがそう言うんですから」
 までの短い遣り取りは、素朴ながらも、じんわりと心に沁みます。
3.パン・マン(清松 みゆき) メインキャラクター:マロウ
 事件発生〜事件解決までは、巧く話をまとめつつも、キャラクターの特性を上手に引き出していて面白かったんですが、事件解決後の後日譚的部分が――ページの関係なのか清松氏の裁量なのかは不明ですが――完全に端折られていて尻切れ蜻蛉でした。まぁ、アマラ説得のくだりが「後日譚」的な部分に当たるのかもしれませんが、読後も「あれ?もう終わり?」みたいな形になっていて、何だか読み終わった気がしませんでした。それ以外が面白かっただけに、残念です。
 基本的には楽しめましたが、積極的に楽しむ、と言うよりも、何も無いよりも面白いみたいな、消極的な楽しみ方になる作品ではありました。
PS:中学だか高校だかの時分に、ツレから「Sword Worldの(公式に発表されている)神々の名前は、全部競走馬の名前から由来している」と言う話を聞いたけど、『パン・マン』に登場するミゴリも競走馬から取っているのだろうか?競馬については無知なので、誰か調べて結果を教えてください(←他力本願)。

【ソード・ワールド・ノベル へっぽこ冒険者と眠る白嶺
  評価点:70点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:秋田みやび  絵:浜田よしかづ
   毎度毎度のへっぽこ冒険者達のサイドエピソード。――そろそろへっぽこヘッポコーズから抜け出せないんでしょうか?Sword World...
 で、不平不満はそれくらいにして、本文。詳細部分は捨て置くとして、取り敢えず面白かったです。
 物語の主役は、旧ヘッポコーズ(親ッさん・洟垂れを加えた、イリーナ/ヒース/マウナ/ガルダド/ノリス)なのですが、俺の中ではエルフトス・パルミュール元子爵。彼が「貴族としての誇りとしがらみ」から解放され、一人の人間として成長していく姿を描いた作品として、本作を楽しむべきだと思います。
 物語の初めの方は、自分とは違う「冒険者」や「蛮族」達を、一歩以上引いた場所から見下すような小役人的だったエルントスだが、最後には、蛮族の少女を、それこそ「自分を投げ打ってでも」助けようと必死になる彼の姿には、何か「打たれる」ものがありました。――言葉で簡単に語るには、難しいですので、そこらへんは是非ご自身の目で読み、心で感じて下さい。
 勿論、エルントスだけでは無く、ヘッポコーズの活躍も目が離せません。灰色熊グリズリーとの戦いで溺死しそうになるイリーナ、相変わらず "眠りの雲スリープ・クラウド" との相性が悪いヒース、息子思いのエルントスに僻んでみたりする可愛い一面のマウナ、エルントスの行動を黙って見守るノリス、で、みんなのまとめ役のガルガドは、特にこれと言った活躍は無かったです(苦笑)。いつもの面々はいつもの面々で、いつも通りの活躍です――それが良いのか悪いのかは、個人個人の趣味ですけどね。
 まぁ、全体としての評価は、『ヘッポコーズ』を主観に置けば、それ程でも無いです。しかし、前述の通り『エルントス』を主観に置けば、かなり面白い。そんな作品でした。
PS:エキューも友情出演です。

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