【THE KING OF FIGHTERS 2000 ICICLE DOLL】 | |
評価点:45点 刊:ファミ通文庫 著:嬉野秋彦 絵:戸橋ことみ | |
あ〜。まず初めに言っときます。コレは、同名のゲームのノベル作品です。登場人物は完全にゲームの方にリンクしており、オリジナルキャラクターは出てきません。出てくるキャラクターは、「K'チーム」と「怒チーム」、「韓国チーム」、「ネスツ」の面々だけです。ちなみに、キャラクターに依存できないタイプの方では楽しめない作品ですね。ストーリーのバックグラウンド自体、殆ど出て来てないし。逆に、キャラクターに依存できるタイプの人ならそれなりに楽しめます。 作品自体は、ネスツとK'の確執の辺りがメイン。作者の趣味でネスツ上級幹部の姉ちゃん二人が、結構活躍場面を貰っていたりする。あくまでもK'とマキシマ、ウィップの三人vsクーラ&二人の上級幹部に焦点を当てている(それと、ウィップと怒チームの関係)。そりゃ、ゼロさん関係ないやね。エピローグでは知らぬ間に倒されているって〜の。個人的にはマキシマvsキャンディ戦が、かなり気に入った。あと、K'の心的描写もお気に入り。自作小説の方の尾羽張に似た所があって。あと、効果音がチャチィのが気に入らない(文字作品の壁だとは思うけどさ……)。 さて、最期に一言。イラストレーターの戸橋先生の描くヴァネッサママが素敵でした。 PS:嬉野秋彦先生のオリジナル作品は面白くないと思が、何故かこのK.O.Fシリーズのノベライズは、とても好きだ。単なるキャラクター依存による物だけではないと思うのだが……何故だろう? |
【THE KING OF FIGHTERS 2000 STRIKERS STRIKE BACK】 | |
評価点:40点 刊:ファミ通文庫 著:嬉野秋彦 絵:戸橋ことみ | |
始めに一言。「K.O.Fに愛の無い人間には読めません」。何て言うのか、K.O.Fの裏の裏まで知り尽くしていないと、一体何の事言っているのかサッパリ解かりません。つまり、「K.O.Fって何?」って言う人には、普遍的に楽しめません。それだけははっきり言えます(本書にもそう注釈打ってる)。 その上で一言。厳しい。K.O.Fのパロディーノベライズなんですが、まァ、本当に暇潰し程度にしかならない。ギャグは辛うじて苦笑いが出来る程度。しかも、ギャグが面白くってと言うよりも、ギャクの稚拙さのせいで。それを全て読破できたのは、ひとえに「K.O.Fへの愛のたまもの」だと思った。 嬉野先生はシリアスだけ書いてれば良いと言う暴言を最後に吐き棄てて、俺は逃げ去る。 |
【THE KING OF FIGHTERS 2001】 | |
評価点:65点 刊:ファミ通文庫 著:嬉野秋彦 絵:ハシモトヒロアキ | |
面白かった〜。今は亡きSNK様から発売の格闘アクションThe King Of Fighters 2001(まぁ、2001の製作は、韓国のゲーム会社「イオリス」でしたけどね)の主人公チームのK'(・マキシマ・ウィップの三人を主軸に、彼等の闘いを描いた闘争の物語。「(上)MORE THAN HUMAN」「(下)THE GODS THEMSELVES」の上下巻構成。 物語は上述の通り、三人を主軸に進められます。主人公チームに敵対するネスツチームは当然いる。そこに、第三者的視点から物語を見つめる怒チームと、その支援チームであるセスチームがいて、そして、いまや物語の蚊帳の外においやられた元主人公チームこと日本チームが軽く登場。登場するのはこの三チームだったかな? 物語の見所は、K'とクーラに執拗な怨嗟を向けるK9999((銀河鉄道っぽいよな、この名前)の狂気。冷酷無比であるはずのフォクシーとダイアナがアンチK'ことクーラ・ダイヤモンドに見せる母性的な優しさと、それに甘えるクーラの可愛さ。ンで、ウィップの気丈さと、マキシマの飄々とした渋さ。「どのチームが勝ち残り、どのチームが負けるか?」を見事に選択しきった嬉野さんの手腕。最後に、ネスツとの陰謀など関係無く、自らの因縁にそのプライドを掛ける草薙京と八神庵――結局二人の物語はこの本の本筋に関係無いので消化不良のままだったですけで、特に残念では無く、あれはあれで良いかな、とか思いました。 この作品、K.O.Fの大筋からは離れる事はありませんけど、チームごとの確執などは嬉野さんの創造性と趣味で結構面白く絡んでくるから好き。K.O.Fを知っている方は、是非ご一読下さい。 |
【殺竜事件 a case of dragon slayer】 | |
評価点:90点 刊:講談社NOVEL 著:上遠野浩平 絵:金子一馬 | |
この世界には、竜と呼ばれる圧倒的存在が七匹存在する。圧倒的な魔力を保有し、人間を遥かに超越した戦闘能力を持つ、無敵にして不死身の存在。「死」と言う物から最も縁遠いとさえ思われる超生命体。その竜が……殺された。死因は、刺殺だ。鋼鉄よりも難い竜鱗を貫いた、たった一本の鉄の棒が、人間で言う所の「脊髄」に突き立っていた。何と言うのか、これが殺人事件ならばあまりにも現実的な、しかし、これが殺竜事件であるが故に突飛な殺傷事件。 お話は、そこから始まります。「不死身なはずの竜が殺害される」と言う、突拍子も無い所から始まるこのお話。"戦地調停士" と呼ばれる戦争調停人エドワース・シーズワークス・マークウィッスル――通称ED(エド)――と、カッタータの騎士レーゼ・リスカッセ大尉と、"風の騎士" の綽名持つヒースロゥ・クリストフ少佐の旅の話。 まぁ、物語自体は淡々と少しずつ進んで行きます。でも、面白いです。特に、EDと竜との対話、界面干渉学のあたりが。「殺竜事件」が関係無い一つのエピソードとして読み進めるだけでも、充分に惹き込まれ、のめり込めるだけの価値があります。 しかし!!やっぱり一番の焦点はその「殺竜事件」にあり!!犯人は――まぁ、予想はつきました。理論立てたワケではなく、よく使われるオチだから。で、殺し方――まぁ、恥ずかしながら思い付きませんでしたが、有り触れた殺し方でした。だが!!あれをああして使うとは……!!これはやはり、秘密にしておくべきだろう。知りたい人は、是非一度御覧あれ!! 文体も、シナリオ作りも、読ませ方も、そして、最後の最後で明かされるたった一つの隠された真実が……!!これは読むしかないでしょうせ(←どこかの方言)。 PS:『M.G.H』と印象が似ていた。似ていただけですが。 |
【さみしさの周波数】 | |
評価点:75点 刊:角川スニーカー文庫 著:乙一 絵:羽住都 | |
『未来予報 あした、晴れればいい。』『手を握る泥棒の物語』『フィルムの中の少女』『失はれた物語』の4本の短編から成る一冊。乙一パワー爆発の、切ない寂しい、染み入る物語です。 『未来予報 あした、晴れればいい。』 行き違い続けた結果の哀しい結末。ただ、その哀しさの中に確かにある「優しさ」が乙一さんらしいです。 『手を握る泥棒の物語』 ん〜。まぁ、どこにでもあるようなお話ではありますね。ただ、手を握っていた相手が実は無関係なアイドルだったってのは、まぁ、ちょっとだけ吃驚。 『フィルムの中の少女』 初めはホラー調で始まったんですが、最後は寂しさを伴う優しさが……。うん、乙一さんはやっぱり「優しさ」と言う形容が付く作品を書くのが上手です。 『失はれた物語』 これはねぇ〜……。どうしようもない。いや、「つまらない」と言う意味では無く、「救い難い」って言う意味ですが。主人公があまりにも哀れで……。主人公の中には確かに妻の事を大切に想う「優しさ」があったのですが、作品自体はひたすらに「哀しい」「寂しい」作品でした。 |
【されど罪人は竜と踊る】 | |
評価点:65点 刊:角川スニーカー文庫 著:浅井ラボ 絵:宮城 | |
咒式(要するに魔法)の発動に対する化学的考察が話の流れを阻害していて非常に厄介。だったけど、読んでいるうちに慣れて来ました。物語の終わりの方では、寧ろそれが軽快でもありました。何故かな?単なる慣れ? 攻性咒式士ガユスと、その相棒ギギナが巻き込まれた、モルディーン卿の描いた喜劇舞台。物語は、肝心なモルディーン卿の策謀劇にちょっと不満。無意味に複雑にしすぎていて、読んでいて疲れる。まぁ、書いている本人が自覚しているようだから、一読者がああだこうだ言っても仕方無い事だろうけど――ま、作者と読者の趣味の違いですか。 ンで、ガユスとギギナの悪態の突き合いが、あまりお上手な遣り取りじゃなかったんで不満。あとは……特に不満は無し。 良かった点。ジヴが可愛い(←馬鹿)。ガユスの葛藤が上手に描かれていた。上述の不満点以外での文章表現等は、読み易く軽快だった。 全体としての物語はもう少し欲張って作り込んでくれたら良かったかな?と思ったけども、まぁ、満足です。 化学的幻想物語の一品です。面白いですよ。 |
【されど罪人は竜と踊る II 灰よ、竜に告げよ】 | |
評価点:70点 刊:角川スニーカー文庫 著:浅井ラボ 絵:宮城 | |
今巻はガユスとギギナの悪口遣り取りが軽快なテンポで繰り広げられていて〇。 今回の見所は、何と言ってもレメディウスに襲い掛かった悲劇と、その悲劇を作り出した現実への憎悪・復讐の一大劇。救いの無い現実を恨み、怨み、憾み、立ち向かった。しかし、最期の最後まで理想は現実の前には叶いはしない果敢無い夢。あまりに救いようの無いレメディウスの行動は、あまりにも惨めだった。 そして、ギギナの達観した人生観が良い。俺もあの境地に立ちたいものだ。 まぁ、今回はそんなものです。ボリュームに見合った面白さではありましたね。 |
【されど罪人は竜と踊る III 災厄の一日】 | |
評価点:75点 刊:角川スニーカー文庫 著:浅井ラボ 絵:宮城 | |
ガユスとギギナの過去のお話。とは言っても、飽く迄もされど罪人は竜と踊る、灰よ、竜に告げよよりも昔、ってだけですけど。 今巻は短編集。『翅の残照』『道化の預言』『黒衣の福音』『禁じられた数字』『始まりのはばたき』の全5編。注目作品は『道化の預言』と『禁じられた数字』。 道化の預言:ある山の中で出会った人狼の一団。その中の一匹を、ガユスが仏心から逃がしてしまう。逃げた人狼は山小屋の老人を殺害するが……。ガユス&ギギナは山小屋で、幾人かの人間達と出会う。しかし、その中に人狼がいるようだ。では、一体誰が? 結局、ガユスはBestな解答を導き出す事はできなかったが、ならば、誰ならばその解答を手繰り寄せる事ができただろうか?最後の最後まで残された命題を、さて、私なら――貴方なら、どのように解き解したのでしょうか? 禁じられた数字:ジヴが鬼でした。そして、ガユスも。「1から100までの整数を順に言い合い、最後に100を言った人が負け」と言うよくあるゲーム。しかし、このゲームに人知を超える罰ゲームが付加された瞬間、この微笑ましいゲームが人間関係に皹入れ、破壊する恐ろしいゲームに化す……。 個人的にお気に入りは、ジヴがジェベイラに「99」で数字を渡す件。喜び勇んで「99」だけ言って罰ゲームを逃れようとするが、そこには人道に外れる恐ろしい罠が仕掛けられていた!!――まぁ、詳しくは読んでください。 しかしこの作品、最強はジヴなのかなぁ?とか思っちゃいます。ジヴ可愛いし(←意味不明)。 |
【されど罪人は竜と踊る IV そして、楽園はあまりに永く】 | |
評価点:80点 刊:角川スニーカー文庫 著:浅井ラボ 絵:宮城 | |
え〜〜、当書評では『されど罪人は竜と踊るIV くちづけでは長く、愛には短すぎて』について全く言及されていませんが、本作は『されど〜IV』からの続き物です。何故『されど〜IV』分の書評が無いかと言うと、まぁ端的に言えば、当時色々と多忙だったんで「後で書こう」と思ってすっかり忘れていたんですね。まぁ、アレです。他意はありません。 って事で第5作目。記憶喪失の少女・アナピヤを連れ、メトレーヤへと旅立ったギギナ&ガユス。そこで知った「アナピヤ」と言う少女の過去。――何て言うのか、浅井氏はこの作品を書いている最中に、何かあったでしょうか?と邪推してしまう程、救いようの無いストーリーでした。女としての尊厳を陵辱され、人間としての価値を蹂躙され、最後には自分自身の意義を封殺してしまう程の過去。多分、俺自身が作者だったとしたら、例え思いついても絶対に書きません。文章を通して描き出される生々しい描写の数々。読み進めながら、最後はちょっと気持ち悪くなりました……。 そして、アナピヤが持つ竜族の <権能> による人心掌握。結局アナピヤは、最後まで自分が欲しかった自分だけの「愛情」を手に入れる事ができず、ガユスも結局、アナピヤをアナピヤが望む形で「愛して」やる事ができなくて。ただ、後悔と自責と悔恨だけが残る物凄く救いようの無い悲しすぎる結末。第十六章で、殆ど何の前触れも無くムブロフスカが、最後の力を振り絞ってアナピヤを復活させ、ジヴと愛の争奪戦を繰り広げる結末さえ「うん。これはこれで仕方が無い。こんな無情で不条理な結末よりは、強引なご都合主義名ハッピーエンドの方がまだマシだ」と思わさせれながら、実はそれがガユスの女々しい悪夢だったりしたり。もう何て言うのか、良い意味で期待を裏切られながら、悪い意味で落胆させられます。 取り敢えず、Happy Endを望む御仁にはどう罷り間違っても推薦できませんが、それでもそれを受け入れる精神的ゆとりがあるのなら、されど〜シリーズはとても水準の高い物語だと思っています。――救いようは、ありませんけどね。 |