Frame ON

【魔界戦記ディスガイア】
  評価点:80点  刊:電撃文庫  著:秋倉潤奈  絵:原田たけひと
   PlayStation2ソフトの同名ゲームのノベライズ。ゲームノベライズにはゲームシナリオを淡々と追っているだけの粗悪なコピー品が多くありますが、ディスガイアは違います。ゲームのキャラクター設定は殺さずに、そこに多少のエッセンスを加味。その上で登場させるべきキャラクターを選択し、ストーリーをアレンジして提供されています。で、それらの結果は「大変面白ぅ御座いました」でした。
 物語は天使見習いフロンが、大天使ラミントンの命により魔界見聞を広めるために魔界の王ラハールの元に訪れる所から始まり、ラハールの母親を殺した魔界貴族マデラスとの因縁に決着を付ける所まで。因みに、原作ではその時点で設定が違います。フロンは大天使ラミントンに魔王クリチェフスコイの暗殺を命じられて魔界へ潜入したワケですし、ラハールの母親の死因は病気のラハールを助けるために自らの命を費やしたワケですし、マデラスは魔王の側近エトナを使ってラハールを殺そうとしていたワケですからね。
 余談はここまでにして、ラハールが頑なに「優しさ」を否定して「強さ」だけで魔界を統制しようとするも、フロンと姉御肌のプリニーの登場によって、少しずつその心を溶かしていく様は、読みながら面白かったです。その部分だけでこの採点結果が出たと言っても過言ではないですね。こう言う人の心の微妙な変化を描ききっている作品って、好きなんですよ。
 最後に。エトナの奔放さが大好きです。

【魔界戦記ディスガイア 魔界で転生♪
  評価点:45点  刊:電撃文庫  著:安曽了  絵:原田たけひと(カバー・口絵)&超肉(本文)
   PlayStation2ソフトの同名ゲームのノベライズ。ですが、秋倉氏著の魔界戦記ディスガイアとは全く別の作品です。
 物語の視点となるキャラクターは、溺れている人を助けようと川に飛び込んでは見たものの、実はそれはマネキンで、愕然としているうちに足を攣ってしまってそのまま溺死した少年(中学か高校くらい)。少年は死後プリニー666号となり、魔王ラハールの奴隷として働く事になったのです。
 物語の筋としては、初めは父の事を疎ましく思っていた666号だったが、魔界での生活の中で少しずつ精神的に成長し、父の本当の心の内を読み取れるまでに成長すると言う、まぁ良くある話なりに頑張ってまとめられたお話だな、って程度です。文体の方は、好みの差はあるでしょうけど、俺としては口語口調の文体にどうも馴染めなかったですね。
 それでも、エトナの唯我独尊的な奔放さだけはちゃんと描けていて、そこの部分だけは評価できると思いました。
 それくらいかな?感想は。

【魔界戦記ディスガイア ENTER THE MAOH
  評価点:30点  刊:ファミ通文庫  著:神代創  絵:原田たけひと
   PlayStation2ソフトの同名ゲームのノベライズ。ですが、秋倉氏著の魔界戦記ディスガイア安曽氏著の魔界戦記ディスガイアとは全く別の作品です。――魔界戦記ディスガイア、ノベライズ出過ぎ……。イラストの原田さんは三者のディスガイアの挿絵をなさったようですが、どなたの作品が一番面白かったんでしょうか?
 ある意味、往年のノベライズ作品を地で逝く作品。原作ゲームを初めから最後まで淡々と文章に起こし、締結させる。ハッキリ言って、この手法のノベライズ作品で面白いと思えた作品はありません。と言うのも、その手の作品は、ただ原作ゲームをなぞるだけで、そこに著者の気持ちが入っていないからです。また、ゲーム中では描ききれていたはずの核心を、ページの都合で端折らざるをえなくなり、物語にまとまりがなくなるからです。そんな作品を読んで、どうして面白いと言えましょうか?そして、この作品もその例に漏れませんでした。
 ゲームのキモである戦術パート――小説化されているならば要は戦闘シーン――が思いっきり端折られていて、しかも設定としてラハールが敵よりも圧倒的に強いとなっております。結果として2行・3行程度の「ボコボコにされました」って記述で流されているので、緊迫感が希薄。ストーリーも前述の通りコア部分が無い上に作者が「仕事でやってます」程度の書き込みしかしていないので、面白くも何とも無い。おまけに言葉回しも原作そのまま。作品に込められた著者の意志は「ゲームはこんなんです」以外に詰まってないとしか思えない。
 先の2作品が「原作になそらえながらも一つのエピソードに焦点を当てて完結させている」「完全オリジナル」であるのに対してこの作品は完全焼き直し。……秋倉氏と安曽氏の作品の前には霞む勢いですね。
 結論。原作焼き増しノベライズはサイコーにつまらない。

【魔界戦記ディスガイア REVELATIONS
  評価点:40点  刊:ファミ通文庫  著:神代創  絵:原田たけひと
   神代氏が書く魔界戦記ディスガイアの2作目。
 まぁ、前作よりは面白かったです。それでも及第点を与えるほどの面白さはなかったですね。キラ&:シャスの関係もすぐに予想できたし、フロン&:エトナの心情の書き込みがまだまだ足りないし、文体も半分以上が会話から成る(個人的に)好きくない文体だし。まぁ、単純に「趣味が合わない」と言ってしまえばそこまでなんですが、まぁつまりは面白くなかったって事。もう少し感情・情景の描写をしっかりとして欲しかったな。
 ストーリーですか?別に何をどうと言う事も無かったですよ?

【まかでみ・らでぃかる1 誘われちゃったんですけど。
  評価点:65点  刊:ふぁみ通文庫  著:榊一郎  絵:BLADE
   まじしゃんず・あかでみぃの外伝本。短編3本から成る萌え萌えな一冊です。一人一殺(意味無し)。
 誘われちゃったんですけど。:羽瀬川 拓人が魔法使いになる為の第一歩を踏み出そうとするお話。よくあるお話だとは思うけども、よく出来たお話だとも思う。このお話関しては、「萌え」とかは無いです。普通の作品として読み、そして普通に楽しめるお話だと思います。まぁ、現実主義な人から見れば拓人の言葉は「現実を見る事が出来ない甘ちゃんの理想論だ」となるでしょうが、そもそもこゆよなライトファンタジー系小説読んでいる時点で、現実から目を逸らしているような気がしないでも無いので、アナタにそれを語る権利はありません。
 犯罪なんですけど。:人間界から魔界への密輸捜査に乗り出した榮太郎のお話。いや、物語の中心人物は榮太郎じゃないんですけどね。密輸品はまぁ、大方の予想通りのジャンルの品だったんですが、普通に「麻薬」とか「世界を滅ぼすマジックアイテム」とかが密輸品では逆にノリが悪くなる事を考えれば、まぁ妥当なのかなァと言う気がしないでも無いです。あと、榮太郎の「漢なら、一度はジーパンをはいて全力疾走するものだろう?!」には、賛同しかねます。世代の差ですな。――でも、エーネウスと一緒だったら走っても良いかも……(←馬鹿)
 妙にモテるんですけど?:無差別チャームの魔法の指輪のお話。まぁそれよりも個人的には「プチエーネウス」が欲しいと思います。プチエーネウスを椅子の上から堪能しているだけで部屋の漫画がどんどんどんどん本棚に片付けられていく――やべぇ……。
 まぁ、アレです。別に「エーネウス」でも俺は構いませんよ?(←馬鹿)。
 関係無いけどここで、まじしゃんず・あかでみぃ個人的にランキング。
1.エーネウス・ザ・バージェスト  ヤバイです。適確な突っ込みするクール・レディには弱いです。
2.プチエーネウス  ヤバイです。ちょこちょこと動き回る可愛いキャラに弱いです。
           最後にスカートを軽く摘んで一礼してから消える所とかもうサイコーです。
3.寒河江教授  美少年面した憑依傀儡サイコ・パペットのクセに燻し銀です。
4.白虎  まかでみには出てきませんが。

【まかでみ・らでぃかる6 宇宙人なんですけど。
  評価点:45点  刊:ふぁみ通文庫  著:榊一郎  絵:BLADE
   まじしゃんず・あかでみぃの外伝本。短編3本から成る萌え萌えな一冊です。
 :<学園>の食堂を切り盛りするおばちゃん、<食神>ジャネット・ランファンが取り逃がした "食材"。ソレは、<食神>の名を冠するジャネットの想像を超えた食材だった――。肉汁滴る "視肉" ハンバーグ。しかし、"視肉"ってまたマニアックなトコロを攻めて来たなぁと、そちらに感心しました。後、ハンバーグの必殺技 "にっくき肉片" とか。メイン標的読者層にリアルタイム読者はいねぇだろ。まぁ、こう言う作品は、メイン標的を大幅に超えてる読者層(俺とか)が読んでいるのが常なんですが……。
 後、御狩谷はるかの救出シーンを克明に描写して欲しかった&挿絵にして欲しかった。超エロいんですけど。
 宇宙人なんですけど。:中学生の思春期になら、誰でも考えることだろう。誰だってそうする。俺だってそうする(そうした)――日常がつまらない。だからと言って、つまらない日常を一変させるようなエネルギーも影響力も無いし、軽はずみに命を絶って世界から(間違った意味で)飛び立つような度胸も愚かさも無い。だから、願う。起こりもしない妄想を――ある時は幸せの絶頂を、ある時は地獄の様相。
 主人公・拓人の同級生・鳴海 圭子も、そんな妄想に囚われて日常を過ごす一人の一般市民だった。つまらない日常を壊してくれる非日常を。ある日 突然宇宙人が攻めてきて、緊迫感に鬼気迫る毎日が始まる事を。そして彼女は――宇宙人に捕まった。
 なんか、解かる。俺も中学生の頃よくそんな妄想してた。今じゃもう少し現実的に「後遺症が残らないけど会社に出なくて良い程度の交通事故に遭わないかな」とか「会社のテナントビルが地震で潰れないかな」とか。そんな、 "宇宙人襲来" に比べれば現実的な負感情ネガティブ妄想。この話で評価したいのは、もう良い年したオッサンであろう榊氏が、いつまでもそんな思春期の少年・少女の心を忘れる事無く、作品の中に反映できた手腕ですね。
 ヒーローなんですけど。:で、こちらも話の流れ的には上述の宇宙人〜と同じ。だけど、現実と妄想の区別も付かない少年の心が少しだけ成長する件は、心温まるものがありました。
 で、今巻の不満は、エーネウスさんの活躍が少なかったこと。もっと活躍させてくださいな、榊さん。

【まじしゃんず・あかでみい I 女神降臨!?
  評価点:45点  刊:ふぁみ通文庫  著:榊一郎  絵:BLADE
   一見平凡な――「過ぎる」くらいに平凡な――高校2年生・羽瀬川拓人は、<学園アジシャンズ・アカデミィ> の見習い魔法使い。彼が追試で受けた「召喚実習II」で召喚されたのは、超高々密度の魔力の塊が長耳美少女の形を取った正体不明の存在だった。
 タクトによって「タナロット」と名付けられた美少女(?)と、タクトに恋心を抱く従妹であり、魔法使いの天敵でもある <宵藍の侵奪者ミッドナイトブルー・ヴァンパイア> 鈴穂の間に繰り広げられる、王道ドタバタラブコメディ。と言った所でしょうか?
 物語の一本柱はもう「萌え」の一言。そゆのが好きな人には大いに受けましょうぞ。ただ、俺自身は「作品」として読む時にそれらを加味する事はあまりないんで、面白くなかったです――いや、勿論、物語ごとに魅力を感じるキャラクターは、そりゃ多々ありますよ?――。ただ、王道萌えをひたすらに追求していた作品のわりには、それなりに暇を潰せる作品ではありましたね。
 で、「萌え」作品ならばある程度はキャラクターに萌えたのか?と言われれば、まぁ否定は致しかねます(遠回しの肯定)。具体的にはエーネウス。どこがどうと言うよりも、ああ言うキャラに弱いだけです。
 作品内容には全く触れず、以上。

【まじしゃんず・あかでみい II 聖女抹殺!?
  評価点:55点  刊:ふぁみ通文庫  著:榊一郎  絵:BLADE
   萌え作品第二弾。個人的には「萌え」よりも「燃え」、「男」よりも「侠」、「おんな」よりも「をんな」の方が好きなんですけどね。まぁ、萌えは萌えで嫌いではないです(意味不明)。
 拓人・鈴穂・タナロットが繰り広げる三角関係。今回は作品として読んでも、それなりに面白かった。人間の持つ倫理観とは隔絶した精神を持つタナロットが、拓人に嫌われないようにと必死に人間の倫理観を理解しようと努力する姿勢は、王道なりに来るものがありました。あと、やっぱりエーネウスが良いです。
 で、肝心な物語ですが、佐久間榮太郎の正体が解かり、タナロットがどのような存在かも明らかになり、拓人も何者かが解かりました。具体的には、それぞれ「サマエル」「生み出された神魔」「神魔を生み出す <聖母>」です。ふむ、成る程。拓人がそう言う存在だったのは、俺の予想の範疇には無くて意外でしたね。
 最後に。寒河江教授が渋いッス。畜生、美少年面した憑依傀儡サイコ・パペットのクセに!!

【まじしゃんず・あかでみい III 魔王発生!?
  評価点:50点  刊:ふぁみ通文庫  著:榊一郎  絵:BLADE
   萌え作品第三弾。個人的には「萌え」よりも「燃え」、「男」よりも「侠」、「おんな」よりも「をんな」の方が好きなんですけどね。まぁ、萌えは萌えで嫌いではないです(意味不明)。
 出々しは聖女抹殺!?のものをそのままコピー&ペースト。それは良いとして、今巻のノリは女神転生めがてんなどに代表される、ダンジョン探索RPG!まぁ、出々しのノリだけですが――そして俺は女神転生めがてんをプレイした事ないのですが。
 物語の冒頭:タナロットと鈴穂の喧嘩の尻拭いで、拓人はタナ&鈴&聖母抹殺!?で登場した白虎のミヤビの3人娘を引き連れて、「迷宮倉庫」の罰掃除を榮太郎直々に言い渡された。しかし、その迷宮倉庫の中で待っていたのは、榮太郎の予想の範疇を越えて大量発生していた精霊化アイテム達だった――って塩梅。
 面白かったかどうか、と問われるとABCD評価でC+って所。でも、大変読み易くて、ちょっとした暇潰しに気軽に読める作品で良いです。ま、逆にそれ以上の感想もこれと言って出てこないのですが……。
 でも、最後にフォローを入れておくと、「エーネウスが萌え〜〜」ってフォローを入れる事もできますよ?(←フォローか?)

【まじしゃんず・あかでみい IV 聖夜爆走!?
  評価点:35点  刊:ふぁみ通文庫  著:榊一郎  絵:BLADE
   物語的には閑話休題的なエピソード。ある年のクリスマスの光景を綴っただけで、お話は何も進展ありません。ええ、そりゃもうメインキャラクター達の人間的な成長さえ見受けられないくらい何の進展もありません。
 これは一度是非とも冬コミに参加した事ある人――特に売り側――に読んでいただきたい。そして感想を聞かせて欲しい。俺自身は同人活動はした事無いんで解からないんですが、榮太郎の同人活動シーンが、結構真に迫っているのでは無いか?と思ったからです。実際どうなんでしょうね?同人誌作成で聴牌テンパってくると、榮太郎みたいな行動を取るんでしょうかねぇ?
 はい、ストーリーに戻ります。主人公・羽瀬川拓人は榮太郎の姦計に嵌まり、ずっと同人誌作ってました。先に拉致られたエーネウスとミヤビのコワれ方が面白かったです。既に神族・魔族の威厳なんてあったモンじゃありません。
 鈴穂・タナ朗・杖の三人娘。サンタ&トナカイコスプレでバイトしてました。タナvs鈴の喧嘩に割って入った寒河江教授が何気にお気に入りだったりします。どうしてでしょうか?
 ……改めて書評に書こうとすると、何も書く事が無いと気付く。本当に空気のような作品です。まぁ、暇潰し程度にはなるんじゃないでしょうか?――あとは萌えを探求する。

MaJiRi
  評価点:35点  刊:集英社スーパーダッシュ文庫  著:爲我井徹  絵:反田誠二
   遥か先祖から脈々と受け継がれた <妖> の血に目覚めた人間、まじりの生き様を綴った現代ファンタジー。
 面白くありませんでしたねェ。なんて言うのか、まず展開に脈絡が無い。次に纏まりが悪い。そして、出てきたきりで「それがどうした?」的なキャラクターが二人ほどいた(多分、続巻への伏線として登場させたのだろうが、どうにも印象が薄くて「何者だコイツラ?!知りたい!!」と思わせるファクターが弱い)。ヒロインの高見涼子も、純愛気取りのクセに節操無くって嫌い。キャラクターの心情も今一オシが弱くてなんだかなァ。
 どうやら爲我井徹さん、『KaNa』って言う漫画の原作者らしいんだけど……ハァ……『KaNa』は面白いんだけどなァ……。続きは出ても、きっと買わないでしょう。

【魔術士オーフェンはぐれ旅 我が戦場に踊れ来訪者
  評価点:65点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:秋田禎信  絵:草河遊也
   魔術士オーフェンはぐれ旅の第16作目。何気に、そんなにも続いていたんだ……と思わせる作品。
 秋田先生の作品は、個人的に文体が非常に好き。人によって好みが別れると思いますが、一つ一つの状況描写が非常に細やか(俺の自作小説のような『冗長さ』とは違う)。そして、読み易い。
 のわりに点数が決して高くはないのは、秋田先生自身があとがきにて述べておりますよう、クライマックスへの「準備編」と言う色が強く、特に驚くような展開があるわけではなく、飽く迄も「伏線を張る」事に重点を置いているように見えるせいだと思う。ま、おかげで「次回」への楽しみは、結構ありますけどね。
 因みに言わせてもらいますと、魔術士オーフェンはぐれ旅の俺的採点の平均点は、75点と高かったりする。
 最期に。イラストレーターの草河先生のイラストが、巻を重ねるごとに変わっていっている。昔はもっと線がはっきりとして今よりも格段に見易かったのですが、今の少し暗い雰囲気のイラストの方が俺は好きだ。

【魔術士オーフェンはぐれ旅 我が庭に響け銃声
  評価点:45点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:秋田禎信  絵:草河遊也
   う〜ん。……今一。読んでいて展開に置いて行かれる自分がいました。
 文章は相変わらず俺の好きな文体でしたんですが、ストーリー展開がどうにも掴み所が無い。何だか前作(我が戦場に踊れ来訪者)に続いて、ラストへの伏線張りが巡らされていて、話が進んでいないのが原因なんでしょうか?あ、でも、この台詞が好き。
_/_/_/_/ 名台詞 _/_/_/_/
オーフェン
  「神はいない」
  「人は自立しない」
  「だが絶望しない」

【魔術士オーフェンはぐれ旅 我が館にさまよえ虚像
  評価点:65点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:秋田禎信  絵:草河遊也
   相変わらず登場人物を覚えていない〜〜。ちょっと考えてみると、登場キャラクターの書き込みが淡白なのが問題なのかな?――いや、これは別に「書き方が下手だ」と言っているわけではない。ってか、下手かどうかは別問題にしても、俺的には好きな書き込み方だし。
 さてさて、物語も漸く佳境(?)。アザリー復活記念巻。オーフェン・クリーオウ・マジクの三人のぎくしゃくした微妙な関係(≠三角関係)が、終わりまでにどう修復(or 変化)しているのか、非常に気になります。
 今回は物語が良い感じで進んでました。ストーリー初期のように「笑える」感は完全に息を潜めてしまってかなり残念ではありますが、重厚な物語進行も持ち味でしょう(かね?エンジェル・ハウリング 3では逆な事言っていたような気がしないでもありませんが……まぁ、あまり気にしないで下さい。どうせ朝令暮改な俺ですから)。
 ところで、ロッテーシャが領主と似ているみたいな事がどこかで書かれていたような気がしましたが(←記憶力DQ3並なもので、既にうろ覚え)、って事は彼女、もしかして "ゴースト" なんでしょうか?
 まぁ、いくつかの謎はまだ残されたままですが、このままの流れでクライマックスまで突き進んでくれたら良いな。

【魔術士オーフェンはぐれ旅 我が聖域に開け扉
  評価点:35点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:秋田禎信  絵:草河遊也
   う〜〜ん……。どうにもこうにも結局何がどうなったのか、混乱のまま終わってしまった感が否めない……。まぁ、俺の脳味噌の処理能力が不充分だけだったのかもしれませんが、それにしてもどうにも合点がいかない場面が幾つか残った。例えば、女神を撃退(では無いか?)した点についてもそう。「そこに結界があるから、女神は降臨する。ただ均衡をもたらす為に。だから結界を取り払えば良い」って、それは何かの確信があったんですかね?魔王スウェーデンボリーの力が教えてくれたのか?オーリオウルの遺言か?仮に単なるオーフェンの予想なのだとしたら、物凄く分の悪い賭けだと思うんですよね。まぁ、他に手段は無かった、と言うお話もありますが。
 他にも多々「ん?どう言う事?」ってな部分がありました。これは予想するに、秋田氏の中で理論・理由が自己完結されていて、その肝心な部分を正確に第三者に伝えきれていないのが原因なのでは無いか?と思うわけです。例えば、ある理論が成り立つ上で、ABCDEと言う理由があり、秋田氏はそれを全て知っている。その上で第三者にそれらを伝える時、秋田氏の中ではACは当たり前となり、BDEだけを伝えた。しかし、第三者は秋田氏を読心する事はできるはずも無く、結局全てを知る事もできず、中途半端な情報だけを与えられて「???」になってしまう。
 とまぁ、言いながらも、初めに言った通り単に俺の脳味噌の記憶能力と処理能力が足りないから理解できていない、と言う可能性も大いにあります。「テメェは秋田氏の言いたい事をどうして理解できないんだ?!」と言う文句があるのでしたら……まぁ、陰口でも叩いていて下さい。正面切って文句を言われても、多分聞き流します。
 で、最後に。気に入ったセリフ。
「まったく、いいのか悪いの、つくづく打ってつけなんだぼくは。世界が滅びる?ぼくにとっての世界ってのは、二週間先までのディナーの予約程度のものでしかないんだ。大したことじゃないよ。とにかく、止められるうちに喧嘩は止めろ。そんなのは当たり前のことだろ。
 だいたいお前ら馬鹿か?強いだの弱いだの。それしかしらないのか。なにか決めたいならアミダでもしろよ」
 以上、ハーティア言葉でした。好きですよ、こう言う淡白なセリフ。

【魔術士オーフェン無謀編11 もういいかげんあきらめろ!
  評価点:55点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:秋田禎信  絵:草河遊也
   魔術士オーフェンはぐれ旅の外伝。月刊雑誌「DRAGON MAGAZINE」にて連載していた作品。
 基本的にギャグ小説です。笑えます。笑えるのですが、長く続きすぎたせいか、最近すっかりマンネリ化した感があって、本編に比べて採点が低いです。でも、それでも笑えます。電車の中で思わずニヤつく様は、傍目にゃ異様な光景だっただろうな(笑)。
 短篇集として、全6作品がありますが、個人的には恒例のプレオーフェン編が好きです。そっかァ……コルゴンって、あんな奴だったんだァ……と、しみじみと笑いました。
 どうぞ、緩りと笑って下さい。
_/_/_/_/ キャラクターランキング _/_/_/_/
1.コンスタンス・マギー
 「桃缶」と「写真」。普段は単なる間抜けな無能警官のクセに……。
2.オーフェン
 「暴力」と「貧乏」。主人公だし、不幸だし、笑わしてくれるし。
3.コルゴン
 「愛想」と「無口」。フルネーム長すぎて忘れた。クール……じゃァ……なかったんね
4.キース
 「超人」と「非人」。キースシリーズ最期の刺客。ARMSは「SNARK(全くの不明者)」(嘘)。

【魔術士オーフェン無謀編12 そのまま穴でも掘っていろ!
  評価点:50点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:秋田禎信  絵:草河遊也
   う〜ん。まんずまんず。時折笑いをこらえなければならない所もありましたけど、それ程多かったワケでもなく。でも、今(2001/11/24現在)にして思うと、エンジェル・ハウリングシリーズよりもこっちの方が読み易いな。勿論、それぞれ個人の好み次第なのですが。
 恒例の番外編はいつもと趣きが違いましたが(秋田さんが意図的そうしたらしいです。詳しくは本書後書きを読むように)、これはこれで良かったですね。アザリーが妙に可愛かった(笑)。こう言うアザリーも結構良いかも。とかも思います。
PS:最後に。表紙でオーフェンの桃缶を食ったのは誰でしょう?
PS:恐らく全員。見たら解かるって?微妙にボニーだけは食ってなさそうだけどね。

【魔術士オーフェン無謀編13 これで終わりと思うなよ!
  評価点:50点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:秋田禎信  絵:草河遊也
   はい、これにて魔術士オーフェン最終巻。収録話は「これで終わりと思うなよ!」「これはいったいなんなんだ?!」「そこまで責任もてねえよ!」「ぼくのせんせいは」の4話。
 内容としては、無謀編の最後を飾るに相応しいドタバタ騒動喜劇。ですが、まぁ、質としてはそれほどでは無かったかな?と言う感が否めませんでした――それでも、面白いには面白いですが――。
 しかし『そこまで責任もてねえよ!』は、結構好きです。ラッツベインとブランドンの掛け合いが好きです。ラッツベインの「えー。せっかく来たのに」の一言にブチ切れるブランドンが可哀想で可哀想で泣けてきます。あと、ラッツベインの師匠ってオーフェン?それともマジク?かなり興味がある所なんですけど……。
 感想としては、最後に「お疲れ様」の一言を添えて、以上です。

【魔法戦士リウイ7】
  評価点:50点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:水野良  絵:横田守
   ソード・ワールド・ノベル『剣の国の魔法戦士』『湖岸の国の魔法戦士』の続編。と言うか、その二作よりも前の時代のお話。この二つが好きだから月刊DRAGON MAGAZINEで連載開始との報せがあった時には期待していたのだが……。魔法戦士リウイシリーズは、正直あまり好きになれない。水野良作品にしては、何だか書き込みが甘いような気がする。その甘さで水野良の持ち味である(と俺は思っている)ハード系のノリを維持しようとして、何だか失敗している、と言うのか。魔法戦士リウイシリーズが終了したら、次は『砂塵の国の魔法戦士』に移行するらしいから、そちらに期待したいと言うのが俺の感想。だって、作品が進むたびに、水野良の味が出てきてるんだもん。もしかしたら、月刊連載と言う縛りが、初期の頃は枷になっていただけなのだろうか?
 このシリーズは、リウイに対する冒険者仲間の女性陣三人(ミレル、ジーニ、メリッサ)と同僚の魔術師アイラの四人の気持ちの移り変わりが根幹にあると思うのだけど、ベタな展開が好きくない。
 何だか書くべき事があまり思い出されないので、ここらへんでおいとましたい。多分、それだけ印象に残らなかったのだろう。

【魔法戦士リウイ8】
  評価点:50点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:水野良  絵:横田守
   う〜ん。7巻同様だね。殆ど語るべき事も無く……。展開がソード・ワールドっぽくなくてあまり好きになれないのは相変わらず。つまらないワケじゃ無いから普通に読めるんだけど、興が乗らないとサッサと読む事も出来ないのも相変わらず。
 あ、でも、幻覚都市 "マーラ・アジャニスの都" の設定は、懐かしのSword Worldテイストを残しつつ、緊張する設定で良かった。何て言うのか、何だかんだで昔を懐かしむ回顧主義が心の中にはあるんだろうなァ……
PS:そのクセ、新ソード・ワールドリプレイは「世界観からズレていても面白いから良い」ってホザてんだよな、俺……。多分、Sword World筆者としての水野良が、古参株だから「昔の」Sword Worldを期待し過ぎているのが原因なのだろう。自信は無いが。

【魔法戦士リウイ9】
  評価点:40点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:水野良  絵:横田守
   魔法戦士リウイ序章とも言える、剣の国の魔法戦士以前のリウイの冒険は、これにて終了。この後に「剣の国の魔法戦士」「湖岸の国の魔法戦士」と続いて、「砂塵の国の魔法戦士」と続いていきます。早くアトン倒そうよ。
 と、知らない人は何の事だか解からない事をのたまって、本筋。物凄く消化不良でした。最後のメルディナとの死闘が、これでもかと言うくらいに端折られていて、クライマックスの盛り上がりが殺されました。どっちかって言うと、グレーター・デーモンとの死闘を端折った方がナンボかマシですわ。
 書く事が殆ど無いな。相変わらず。まぁ、砂塵の国にお話が移行した頃に、物語がもう一度「剣の国」のノリに戻ってくれる事を願います。
PS:あと、関係無いんだけどさ、やっぱり横田氏のイラストが好きになれない。

【魔法戦士リウイ0】
  評価点:50点  刊:富士見ファンタジア文庫  著:水野良  絵:横田守
   魔法戦士リウイの3人娘の出会い(ガールズ・ミーツ・ガール)と、その出会いよりも前の各人の物語(プリーステス・オブ・ウォーゴッド、レディ・マースナリー、アイ・オブ・ザ・キャット)、そしてリウイとの出会い(クエスト・フォー・ブレイブ)。ま、短編集ですね
 ガールズ・ミーツ・ガール(少女は少女と出会う)。どうでも良いけど、ガールズ・ミート・ガールじゃないかな?いや、どうでも良いんですけど。お話自体はまぁ、そんなモンかな、ってレベルのお話。物語としては有り触れた物をキャラクターを変えてそのまま焼き増ししただけって印象が強くて、好きじゃないです。
 プリーステス・オブ・ウォーゴッド(戦神の神官)。メリッサの少女時代の話。騎士相手に一歩も引かないメリッサと、コンラッドの脇をするりとすり抜け「仕えるべき勇者を探してまいります」と浮かべた笑顔は素敵でした。
 レディ・マースナリー(女傭兵)。弱っちぃクセに男を見せたヘクターの話(違)。いや、本当はジーニの傭兵時代の話なんだけどさ。貧弱な没落貴族のくせに、妹の為に剣を取り、愛する女の為に命を楯にしたヘクターの行動は――恐らく愚かだったのだろうけど――賞賛に値します。俺には絶対できません。自分至上主義者ですから。
 アイ・オブ・ザ・キャット(猫の目)。サムスの話(だから、違)。あ〜〜。あまり面白いお話ではなかったですね。あ、でも、出番の少なかった冒険者達がちょっと燻し銀で恰好良かったです。って、どこに注視してんだ、俺。
 クエスト・フォー・ブレイブ(勇者を探して)。3人娘とリウイとの運命の出会いの瞬間のお話。いや、別に。ただ事実を事実をして語っているだけのような(フィクションだけどね)、そんな盛り上がりも盛り下がりも無いお話でした。
 結露。プリーステス・オブ・ウォーゴッドとレディ・マースナリーが面白かったです。
 

Missing 神隠しの物語
  評価点:75点  刊:電撃文庫  著:甲田学人  絵:翠川しん
   神隠しは伝染する……で始まる、ちょっとダークな物語。
 主人公の "魔王陛下" こと空目うつめ恭一きょういちが神隠しの少女に捕まる事から物語が始まる。
 物語を実際に読めばわかるのだけど、甲田さんの文章力は圧巻です。近藤こんどう武巳たけみが神隠しに襲われるシーンがあるんだけど、思わず背筋に寒気が走る程の戦慄。今後の活躍が楽しみな小説家です。
 物語は最後の最後で何だか中途半端感が残りましたが、それでも充分に楽しめます。
PS:結局、木戸野きどの亜紀あきの天の邪鬼な恋心はどうなるのか?続刊は出ないでしょうが、出るとしたらそっちの方が気になる所ですね。

Missing2 呪いの物語
  評価点:80点  刊:電撃文庫  著:甲田学人  絵:翠川しん
   で、予想を見事に外してしまって第2巻の発刊です(苦笑)。
 今回の主人公は、前巻にて個人的注目度大だった木戸野亜杞。彼女に宛てた『呪いのFAX』によって、彼女の日常は突き崩されて逝く。
 前巻に続いて、圧倒的な文章力を発揮した甲田学人さん。何だか今巻パワーアップした感がありまするね。前巻はその文章力にも関わらず、重く圧し掛かるダークな文体が、先を読もうとする気力を萎えさせていたんだけど、今回は「続きが気になる」と言う欲求を見事に刺激してサクサクと読ませてもらえました。それと、読点・句読点の打ち方もプロの方としてはかなり特異で、それが逆に作風の魅力を引き上げる結果になっている(と思う)のでかなり◎――と思っていたら、甲田さんは一年前までの十年間は絵描きを目指していたらしいですねェ……。それまでは文章なんて書いた事無いらしくって、読点・句読点打ちの特異さは逆に「拙さ」である可能性もある(勿論、狙っている可能性も高いんだけどね)。それにしても、たった一年間でこの文章力ってのは凄いですよ。
 肝心要のシリーズ主人公 "魔王陛下" 空目恭一、かなり頑張ってました。何て言うのか、彼の異様な存在感が遺憾無く発揮されていてGOOD! 神隠しの物語では "神隠し" あやめに攫われていて出番無かったからなァ……。
 今後の展開としては "魔女" 十叶とがの詠子よみこと、謎の存在・神野じんの陰之かげゆきの二人が気に掛かりますね。
 ンで、日下部くさかべ陵子りょうこの友達想いの優しさと近藤武巳の情けなさも微笑ましい。あと、作中で一番必死だったのは村神むらかみ俊也としやだと思う。
PS:イラストレーターの翠川しんさんの絵柄がどうも作風に合っていないような気がするんだよなァ……。

Missing3・4 首くくりの物語
  評価点:80点  刊:電撃文庫  著:甲田学人  絵:翠川しん
   3巻「首くくりの物語」、4巻「首くくりの物語・完結編」の二冊構成。
 首吊り死体……温存してた短編ネタで使おうと思っていたんだけどなァ……。まぁ、ストーリー自体は全くの別物だから問題無いと言えば問題無いんだけど……。無いんだけど、なんだよねぇ……。ま、どうせ暫らくは(2002/02/07現在)筆が進まないだろうし、俺が作品仕上げる頃に、皆様が忘れていらっしゃる事を期待しましょう。
 問答無用でMissing関係無い話から話題を振る。書評が聞いて呆れます。まぁこんな感想文レベルな書評なんで今更と言えば今更ですが。Missing3・4です。『神隠し』『呪い』と来て、今度は『首くくり』。相変わらず怖いです。恐怖を「魅せる」場面での書き込みが上手なんですよね。
 さてさて、今回の焦点キャラクターは、とっても普通で優しい少女・日下部陵子。図書館から借り出した本の中に一冊だけ混じった禁帯出の見慣れぬ本。末子成功譚として一枠にくくられる種類の昔話『奈良梨取考』。それが、今回の物語の語り手であった。
 え〜、何から書こうかとかなり迷ったのですが、取り敢えず今後の展開として気になる所から書かせていただきますと、日下部と近藤の関係ですな。奈良梨取の末子として操られている時に、突然の告白を受けた近藤と、首くくりに関する記憶を抹消され、その事実も一緒に消された日下部。二人のギクシャクした関係は結局、お互いの理解で解決した物では無く、外部からの圧力を受けて有耶無耶の内に「無くなった」物でしかない。近藤君はたまらんでしょうなぁ。
 そして、姿を消した "魔女" 十叶の行方と彼女が語ろうとする物語、"人界の魔王" 空目が望む願望、"名づけられし暗黒" にして "全ての善と悪の肯定者" にして "夜闇の魔王" たる神野陰之の正体。最後に、大迫栄一郎が今後も登場するのか。そこいらへんですかね。
 あと、魔王陛下こと空目の展開する理論がとてもとても突飛で暴論的で大好きです。今後「魔王論」として流行らそうかしらん?
 ああ〜〜、肝心な「首くくりの物語」に関して全く触れてないなァ〜〜。

Missing5 目隠しの物語
  評価点:80点  刊:電撃文庫  著:甲田学人  絵:翠川しん
   『物語』の中心人物。神隠しでは空目、呪いでは亜紀、首くくりでは陵子ときて、本「目隠し」では近藤となります。となると、次巻では一番頑張っているわりに一番印象が薄い村神だろうか? 下らない予想事は捨て置いて、今回も変わらず面白いなァ。コンスタントに質の良い作品を書き上げられるのは、プロとして食って行く為には必要な才能ですよね。短く簡潔に纏めたり、仮にMissingがアニメ化したりしたらきっと怖くも何とも無い作品になって仕舞うんでしょうけど(←予想)、甲田氏の圧巻な文章力をなぞって行けば、背筋も凍るような恐怖に見舞われます。
 今回の『物語』はこっくりさんの亜種「そうじさま」偶然か必然か、「そうじさま」に登場する目隠しの少年は、かつて神隠しに攫われた空目の弟君をなぞった者だった。
 やはりここで『物語』に関わって来た "魔女" 十叶。彼女が撒いた『物語』の種は、果たして元々存在していた『物語』だったのか、はたまた彼女が自ら生み出した『物語』だったのか。そして、彼女にはどのような力があり、どのような『物語』を語りたがっているのか。物語の終局は、彼女に掛かっているようですね。

Missing6・7 合わせ鏡の物語
  評価点:70点  刊:電撃文庫  著:甲田学人  絵:翠川しん
   上巻「合わせ鏡の物語」、下巻「合わせ鏡の物語・完結編」からなる二巻構成。物語の焦点は、副題ずばりの「鏡」です。
 今回のお話で怖かったのは、上巻で赤名裕子と大木奈々美が異界に連れ攫われるくだりと、下巻で水内範子が "偽者" の裕子の腹部をパレットナイフで抉るシーンと、その範子が自分の目に鏡の欠片を詰めていくシーン。後者はどっちかと言うとB級スプラッタ的な恐怖なんですが、読みながら腹の奥に、目の裏に異物でも詰め込んだようにジュクジュクとした気持ち悪さが生まれました。読み手に感情を感じさせる、って言うのは、感動であれ恐怖であれ、著者の手腕に寄る所、そう言う意味ではやはり、甲田氏の手腕は侮れないです。
 物語は漸く "魔女" 十叶先輩を中心に語られ始めました。"魔術師" 小崎おざき摩津方まつかたの『魔術の物語』を、魔女はどのようにして利用し、どのような物語を綴り織るつもりなのか?目隠しの物語でも同じ問いを発していましたが、そろそろその当たりの真相に触れるか触れないかの瀬戸際に、Missingは立ち始めているようです。
 さてさて、今回の物語の中心は、一体誰だったのでしょうか?順番的に考えると、村神俊也なんですが、今回彼は自分が「〃怪異〃に大してあまりに自分は無力だ」と痛感していただけですからねぇ。敢えてメインの5人から選ぶとなると、十叶に「聡子お姉ちゃん」を見出された陵子か、「そうじさま」をその身に宿してしまった近藤か、それとも "夜闇の魔王" たる神野陰之との邂逅を果たした魔王陛下か。取り敢えず、今回は亜紀はメインでは無いですね、残念ながら。
 上巻は読んでいても正直「あ〜、ぼちぼち。いまいち」って塩梅でしたが、下巻はいつもの「甲田パワー」全開で怖かったです。その「怖さ」をそのままに、物語を面白い方向に進めてくれる事を望みながら、次巻に乞うご期待。

Missing8 生贄の物語
  評価点:55点  刊:電撃文庫  著:甲田学人  絵:翠川しん
   相変わらず面白いんですが、そろそろ飽きてきたかな?と言う気がしないでも無い。もっとこう、一気に捲くし立てる何かが来て欲しいですねェ〜〜。
 自分はオリジナルノベルの更新さえしていないくせに(2003/05/16現在)エラそうにのたまってみました。
 物語は漸う佳境に入って参りました。"魔女" 十叶の陰謀の始まりが見え始めて来た、"神隠し" あやめの正体が明かされようとしている、何より "追憶者" 武巳が陵子を守るために変わろうとしている。最後は見逃せない変化ですよ。他人を拠り所とし、信頼する何かがあれば自分(達)は大丈夫だと、そんな安穏な他力本願の少年が、少女の為に強くなる――ある種の王道ですか?好きですよ、こう言う展開。
 今巻の見所ですが、"物語" の冒頭。少女がシャワールームで繰り広げた妄想の恐怖。甲田さんは相変わらず「文中のキャラクターの恐怖を読者に伝染させる」手法の書き方が上手です。少女が何を思い恐怖し、どうやってその恐怖に心を呑まれて行くのか――こう言う部分は、読んでいて飽きないし、参考になります。
 続いて、陵子が "物語" に引き込まれた時。口から垂れ流すように吐き続ける「助けて」は、実際に耳朶を打つような印象を与えて怖かったです。もしも現実にあの言葉をあの声(←想像)で囁き続けられたら、俺だったら逃げ出すね。
 最後に。置いてけぼりを喰らった亜紀が不貞腐れるシーン。普段気丈でクールな女子が時に見せるああ言う「子供っぽさ」は、何て言うのかたまりません。
 物語の見所ダイジェストはそんなもの。今後の展開の期待は、復活したがどう行動を起こすのか? "魔女" が描こうとする "物語" の内容と結末は? "夜闇の魔王" 神野は、その "物語" にどのような関わりを持つのか?そして何より個人的な注目は、亜紀が空目に寄せる想いの行方がどうなるか?!
 そんなものに期待しつつ、そして開き始めた俺の心に打つ何かがてんこ盛りになっているように期待しつつ、以下次巻。って塩梅です。

【夢界異邦人 眠り姫の卵
  評価点:70点  刊:電撃文庫  著:水落晴美  絵:椋本夏夜
   読まなきゃ良かった……。面白くなかったのかって?いいえ、面白かったです。では何故か?似ていたからです。何にかって?自作小説"鍵師稲村旅行紀譚"にです。「夢界」が「〃世界〃」で、「夢界異邦人」が「〃鍵師〃」に置き換わった程度で、殆ど設定が重なっていて……。しかも、細部の設定や夢界に反映される世界構成が、少女の心象に大きく左右されているあたりなど、俺には真似できない。因みに俺、別にパクったワケじゃありませんよ?どっちかと言うと、"鍵師稲村旅行紀譚"の元ネタは妖魔夜行ですから。
 そんな、ちょっと悔しい気持ちはさて置いて、一度に訪れた「裏切り」から、自分の殻にこもった少女の、少し切ない、小さな勇気の奮闘記。
 「チョコレート」に偽りを隠し、全てを「秩序」の名の元に「修正」していく管理局。「洞人」ととして捨ててしまいながらも、その中にこそ大事な「神」を見出して。読後に思い返すと、よく出来た世界背景と、「夢界」に隠された一つ一つのファクターに納得。ただ、ボリュームに対しての読後の感動が少し見劣りしますね。もう少し短ければ良かったのですが。
 あと、キャラクターへの感情移入が今一弱かったな。これも減点対象になる。残念。ストーリーはしっかりと纏まり、作品が訴える事柄も直接的な言葉として出てきて、解かりやすくて良かっただけに、残念だ。
 最期に。あれだけ分厚いのに、椋本夏夜さんのイラストが少なすぎて落胆大。

【夢界異邦人 竜宮の使い
  評価点:75点  刊:電撃文庫  著:水落晴美  絵:椋本夏夜
   前巻の「眠り姫の卵」では減点対象として挙げていたキャラクターの魅力が、今回で大幅にアップ。紅美姐さんがもっと活躍して欲しいと思うのは、俺の我が侭だろうか?て言うか、主人公が凛だって事をついつい忘れてしまう。
 真っ先に横道それた後で内容の方へ。
 この巻の見所は物語の中心に位置付けられる拓也の、その心情だと思う。
 夢界にだけ存在できるはずの生き物が、現実世界に流れ付いたのが事の起こり。その生き物は「龍のよう」だったらしい。「それ」は拓也と言う高校生を追い詰めようとする人物達を襲っては、傷付けて行った。それはきっと「それ」なりの拓也への忠誠だったのだろうが、拓也はそれを望んではいなかった。拓也は、彼等を憎んでなんかいない「はず」だったから。
 拓也の中にある葛藤。傷つけたくないから自分を曝け出さず。だから感情を押し殺していたのに周りからは「気持ち悪い」と反感を買い。ついには、自らの「夢界」に逃げ込んで。望み通りになるはずのそこでも、自分を向かい入れてくれる人なぞおらず……。現実世界から目を背けた者の末路、とも言える結果かも知れないけど、やはり現実をしっかりと見詰め、そこに希望を見出す事さえ出来れば、帰って来れる。そんな、ダークなノリの中にほんのりと暖かさが残る優しい作品です。
 読後、凛の過去が非常に気になってます。続編、早く出ないかな。

【夢界異邦人 硝子の蝶
  評価点:45点  刊:電撃文庫  著:水落晴美  絵:椋本夏夜
   う〜〜ん。今回はちょっと……。新たに登場した「ワタリ」と「蟲」の存在が、却って作品を飽食気味にした感がありましたね。確かに「ワンパターン」は作品として間違えているけど、だからと言って後から後からゴテゴテと設定を付加していくと、ただ読み辛くなるだけのような……ゴメン。自分の事を棚上げして偉そうに言ってしまいました。
 さてさて、今回の注目キャラクターはやはり千夏だろう。過去の思い出と、それにあったはずの「自分」を失い、それを見付ける事を望んだ。何て言うか、健気で健気で可愛すぎます。髪の毛がロングの頃のイラストは大人びていたけど大人しい感がありましたが、ショートになると幼いながらも元気さに溢れていていい感じでしたね。後書きページの少し淡い感じの千夏も、かなり素敵。う〜ん、椋本夏夜先生に乾杯(←何かを間違えてる)。
 さてさて、今回は少々辛口だったので、次巻にこそ期待しましょう。

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