(死んでしまいたい)
彼女は夜の町で、そう思った。否、寧
歩道橋の上。分離帯で別たれた左右合計六車線の瀝青道路
制服から察する所、どうやら市内の私立学校の生徒のようだ。白と水色の対照性
彼女は一瞬の躊躇
力無く、唇が動いた。ポツリと呟く為だ。その言葉は、斯
「このまま鳥に成れたら……お父さんとお母さんの所まで飛んで逝
「それは無理だな。残念ながら」
驚き、そのままの態勢で声の主を探す。
「鳥に成ってしまえば、夜の闇の中を見通せなくなる。良いとこ、迷子の迷子の小鳥ちゃんだ」
声の主は、程無くして見付かる。いつからそこにいるのか、彼女の背中越し。向かいの手摺に凭
「……止めないで……下さいよ……」
虚
「無茶言わないでくれ。目の前で君を見捨ててしまうと、いくら俺でも寝覚めが悪い。それに、自殺者を見て見ぬ振りをするのも犯罪なんだよ?知ってたかい?」
青年が、何処
「まだまだ人生を謳歌
「羨
少女は言った。青年には、「羨ましい」と言うよりも、「憎らしい」と聞こえたが。
「私には、もう謳歌するだけの人生は残されていないのよ……さようなら」
見ず知らずの男に言い残し、少女は歩道橋の手摺を蹴った。
瞳を閉じて――顔を優しく撫
これで、お父さんとお母さんの所に逝ける……。そんな事を考えていたから。
少女は自分でも驚く程の穏やかさで、来たるべき衝撃を待った。
僅か数秒の時が流れ、衝撃が襲った。硬く鈍い衝撃。では無く。柔らかな穏やかな衝撃。
不審に思い、少女は目蓋
「やめときなよ。何があったかは知らないけど。折角
歩道橋の下。中央分離帯の上。落ちた少女の体を、青年が優しく抱きとめていた。月明かりを背負う青年が、穏
「位置場
どうして?そんな疑問を訴える少女の瞳に向かい、男は名乗った。
「君の名は?」
少女は、北村と名乗った。
名前は、教えてはくれなかった。