天秤 ―Is more Fright? or Love?―
6th chapter

 町に喧騒が響く。昨夜の雨は嘘のように去り行き、日の光が水溜まりから返って眩しく踊る。
 あれからカトスは、悲しみに暮れるラファの元へと、ティプラを連れ立ち戻って行った。
 結局ラファがティプラに対してどういう反応を取ったかと言うと……。
 チラリと視線を脇に寄せる。毛布に包まり、猫の親子のように寄り添う二人を見れば、何も語る必要はあるまい。ラファは弱くても、母は強かったと言う所だ。
 海賊どもはキャプテンの死を知るなり波が引くように退却を始めたらしい。しかし、退路を巡回中の海軍に断たれ、物の見事に沈められ、生きて残った連中は、敢え無く残らず御用となった。
 身近の仲間達には、恐ろしい程の偶然で、死者は出なかったものの、負傷者は多く出ており、危うく峠を転げ落ちそうだった奴もいた――まァ、今は絶対安静ながら、死ぬ心配は無いようだ――。しかし、見知らぬ所では少なからず死者や行方不明者も出ており、破壊され焼かれた町並みを元に戻すのは至難の業となるであろう。
 町並みの復興。負傷者の手当。破壊された漁船の修復。何より、魔神クラスの破壊力を有するティプラのギフトの取り扱い。頭を悩ます種は、暫らく尽きそうにも無かったが……
「ティプラ……」
「……ママ……」
 ラファの寝言に答えるようにして、ティプラも寝言で返していた。
 娘と妻の髪の毛を順に掻き上げてやりながら、カトスも町の再建にもう一踏ん張りの努力をするかと、重い腰を上げた。
 今は、家族の無事と、愛の絆の深さに酔い痴れようじゃァないか。

All is over
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Good-bye

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