◇◆私立柊学園女子寮記◆◇
−柊葭香の華麗なる朝 Sleeping Beauty
著者:あかせ かすみ

柊家のご令嬢、柊葭香。彼女の朝は驚くほど遅い。

「ん・うんん・・・」
AM8:00ふと目が覚めた彼女は、ゆっくりとした動作で起きあがると、まるで夢遊病者のようなおぼつかない動きで、ベットサイドに綺麗にたたまれていた制服を着込む。
そして、その場に備え付けられたベルを鳴らすと(むしろ、倒したと表記すべきか)、再びベットに倒れ込み、すやすやと幸せそうな寝息を立てる。
「急ぎなさい。本日は時間がありません」
そのベルが鳴りやむ間もなく、音も立てずに扉が開くと、びしっとした蝶ネクタイ姿の老人はそう言い、後ろに控えている男女に声をあげる。
「了解です。スクランブル、ヘリを出せ」
無線を持った男が言う横を、さらに後ろにいた男達がすり抜け、ベットで横になる葭香嬢を抱き上げ、近くにあるイスに座らせる。
イスに座った彼女に数名の女性が近寄り、髪の毛の手入れなどを始める。
「ヘリが到着、直ちにお嬢様を搬入いたします」
「急ぎなさい。あと、7分29秒です」
時計を見たままの老人はそう言い部屋の窓を開ける。
『とうヘリ、指定位置に待機完了。スロープを下ろす』
「本日は固定をする暇がありません。2分以内に搬入を済ませなさい」
「了解しました」
身支度の整えられた葭香嬢を先ほどと同じ男達が抱き上げ、ヘリの接近した窓へ近づく。ヘリからのびたスロープを数人の男達が固定し、そのスロープの上を葭香嬢を抱き上げた男達が進む。
『お嬢様の搬入を確認。直ちに教室へ向かう』
ヘリ内のイスに座らされた葭香嬢の後ろで、蝶ネクタイ姿の老人が時計を確認する。
「よし、時間通りですね。搬出準備を」
「了解。連絡開始・・・教室の窓の開閉を確認。スロープの準備に入ります」
『とうヘリ、ホバリングにて限空域での待機作業終了。スロープを下ろされたし』
スロープが再び出され、今度は教室の窓辺にしっかりと固定する。
教室内の窓辺の席に座っていた生徒達は、かって知ったるやで席を離れ、スロープの辺りを空ける。
葭香嬢を三度抱えた男達がスロープを降り、彼女を指定の席に運ぶ。
「おはようございます、藤代さま。本日もお嬢様をよろしくお願いいたします」
葭香嬢のあとから降りた老人は深々と頭をさげ、挨拶をする。
「まあ、普段通りには」
「ありがとうございます」
短い受け答えをし終え、老人は再びヘリに戻る。
『作業完了を確認。とうヘリはこれよりこの空域を離脱します』
ヘリが飛び立ったあと、席を離れていた生徒達は何事もなかったように自分の席に戻る。
「・・・あっ、ありささま。おはようございます」
不意に目を覚まし、しばらくきょろきょろとしていたあと、後ろを振り向き葭香嬢は笑顔で挨拶をする。
「葭香、たまには自分の足で教室に来なさい」
その笑顔にありさ嬢は、やや憮然とした表情で答える。
「はあ・・・努力はしているのですが」
「まあ、いいけどね・・・」
ありさ嬢はそう言うと小さく溜め息をついた・・・


end.

thanks, for your read.
everybody, get up eary to neatly.


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